(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 目暮警部 千葉刑事 鈴木園子 里山月子(34) クッキー 飯盛薫(29) 出川アツ子(26) 猪俣保子(26) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 警視庁捜査一課警部 捜査一課刑事、目暮の部下 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 合宿所オーナー兼インストラクター 合宿所のアイドル犬 シェフ ダイエット合宿参加者、出川コンツェルンの社長の娘 ダイエット合宿参加者、アツ子の友人 |
高山みなみ 山崎和佳奈 茶風林 千葉一伸 松井菜桜子 引田有美 ??? 渡辺明乃 坂本千夏 麻見順子 |
太陽は偉大…体一杯にそのエナジーを取り込みましょう…そんなに硬くならず、もっと心も体も解放してあげましょう…
蘭が持ち前の強運で有名人御用達のヨガスタジオ「チャンダニ」の招待券を当てたことからヨガダイエット合宿所「チャンダニ」にやって来た蘭と園子、それになぜか付き合わされることとなったコナンの三人。
一泊二日でナイスボディーになってやると意気込む園子でしたが、オーナー兼インストラクターの里山月子からは急に無理してはいけない、体を壊しては元も子もないと諭されます。
自然のエナジーを取り込み心身ともに健康にという両親のコンセプトを受け継ぎ高い支持を集めてきたヨガスタジオだけに行き届いた配慮は見事なものでしたが、そんな人気のヨガスタジオにも悩みはありました。
シェフと同じで見栄ばかり張ったまずい料理だ、お茶を飲んで舌をヤケドした、ここでヒドい扱いを受けたとネットで一杯書き込みしてやる…そんなことになったらここの評判はガタ落ちよね…それは出川アツ子という名前の太った若い女で、園子によると出川コンツェルンの社長の娘で手のつけられないクレーマーだともっぱらの評判だというのでした。
出川アツ子はこれはクレームではなく正当な意見だと言い切り、仕舞いには土下座したら許してやってもいいと言い出す始末…ところがそんな状況でもオーナーの月子はどんなことがあってもお客様が心地よく過ごすことを考えましょうと土下座をするのも厭わないのでした。
しかし出川アツ子は悪質なクレームを逆に裁判で訴えられて負けたらしく、電話で敗訴を聞かされると怒り狂って蘭たちの前から姿を消します。同じように訴えられているケースも少なくないらしく、強気な見た目とは裏腹に厳しい状況に立たされているようで…。
それから蘭たちは各自の摂取カロリーを守りつつビュッフェ形式の食事を楽しむことになりますが、そこへまた出川アツ子が現れてラップが切れていたと空箱を投げつけてすぐに新しい物を持ってこいと言い出したかと思うと、蘭が取った小鉢を横取りしたりと相変わらず感じの悪い態度でやりたい放題。
ところがそこへまるで天の助けとばかりに窓の外に雲に隠れていた月が姿を現したのです。月には浄化という強いパワーがあるらしく、美容にもいいことから食事の前に今すぐヨガをしてはどうかと月子から提案された一同は、食事を各自の部屋に置いてから庭に集まり月の光を浴びて清々しい気持ちになろうとヨガをはじめます。
しかし出川アツ子はすぐに挫折してしまい、さっさと自分の部屋に引き上げてしまいます。月子や蘭たちはアツ子を呼びに部屋の前まで来ますが、これから食事だから邪魔するなと言ったかと思うと洗濯をしておけとウェアを猪俣保子に投げつけ…。
その後出川アツ子と彼女に命じられた通りに洗濯をしに向かった猪俣保子の二人が姿を見せない中で月子と蘭たちだけでヨガは無事終了します。
ところが蘭たちが合宿所に戻ると入口の所に猪俣保子が姿を見せ、アツ子の部屋へ様子を見に行ったものの鍵がかかっていて返事もないというのでした。
そこで月子は蘭たちに食堂でお茶を飲んで待っているように伝えてから、アツ子の様子を見に一人合い鍵を使って彼女の部屋の中へと入っていったのですが……
蘭が持ち前の強運で当てた招待券でヨガ・ダイエット合宿所「チャンダニ」にやって来た蘭と園子、それにコナンの三人。
高い人気を集めるヨガ・ダイエットを満喫するはずでしたが、合宿の出席者に出川アツ子という財閥社長の娘で手のつけられないクレーマーが参加しやりたい放題に振舞っていたことで合宿は重い空気に包まれ進んでいきます。
そしてその夜、ついに事件が…晩御飯の時間にオーナー兼インストラクターの里山月子の提案で急遽月明かりの下でヨガをすることになった一同でしたが、あまりのきつさに出川アツ子は途中で挫折し勝手に自分の部屋に引き上げてしまいます。
ところがその後蘭たちがヨガ・ダイエットを終えて合宿所に戻ってくると、そこにはアツ子を心配する友人の猪俣保子の姿が。どうやらアツ子の様子を見に行っても部屋には鍵がかかっていて、呼びかけにもまったく応じないらしいのです。
そこで様子を見に里山月子が合鍵を持って彼女の部屋に入ってみたのですが……
里山月子がオーナー兼インストラクターを務める有名人御用達のヨガスタジオ。ちなみに「チャンダニ」とはインドの言葉で月の光という意味なのだそうです。
自然のエナジーを取り込み心身ともに健康にと、以前同じようにヨガ合宿所をしていた両親がつけてくれ、そのコンセプトが支持を集めたそうです。
低カロリーだが豊富なメニュー、野菜はすべてオーガニックの自家栽培、何より味もいいと評判なのだとか。
この名前だとカッコいいとかオシャレな感じがしますが、要は食べ放題です。ビュッフェには立食形式と席に座って食事を楽しむものとそれを掛け合わせたものがあるそうですが、今回のは自分の部屋に戻って食べるというちょっと特殊な形でしたよね。
野菜のカレーマリネ(220kcal)、月下美人の浅漬け(15Kcal)、根菜のハーブ煮(210kcal)はどれもチャンダニ名物のビュッフェで登場した料理の名前です。美味しそうですよね。
メキシコなどの中南米原産のサボテン科の植物。夏の夜につぼみから満開になりひと晩でその短い命を終えてしまう花で、1年に1度(きちんと手入れすれば2回以上見られるそうですが)、しかも夜にしか開花せず花が咲き出すまでに3年ぐらいかかるため、花を見ることができるだけでもラッキーなのだとか。
名前の由来は真夜中に美しい花をつけることからきているそうで、1923年に昭和天皇が当時皇太子だった時に台湾を訪問したのですが、その際に当時の台湾総督だった田氏に花の名前を尋ねられとっさに「月下の美人」と答えたことからこの名前が定着したというエピソードも残っています。
ちなみにその花弁は食材にもなり天ぷらなどにして食べるそうで、今回のチャンダニのビュッフェにも料理として出ていましたよね。
今回のお話は高木刑事が登場せず目暮警部と千葉刑事という珍しい組み合わせでしたね。そして最近人気のヨガ・ダイエットを題材にした本格謎解きミステリーでしたが、かなりいい出来栄えではなかったでしょうか。それにしても最近のTVオリジナルは結構完成度高いですよね。
正直最初ざっと見た時には毒殺で直接手を下す訳ではないのだから蘭たちと一緒にいてアリバイがあっても意味ないじゃんと一瞬思ったのですが、よくよく検討してみるとそこにビュッフェ形式で被害者が自分で好きなものを取るため前もって毒を入れておくことができない事と、人が食べているのを見ているとストレスが溜まるからと上手く理由をつけて料理を自分の部屋で食べるように仕向けることで上手いこと不可能状況を作っているんですよね。このあたりは結構見事だったと思います。
そしてラップのトリックですが、これも目からウロコという感じで面白いトリックでした。ただ自殺しようとしている人物が料理に毒を入れて食べるというのが不自然では(普通は水とか摂取しやすい飲み物に混ぜる気がするのですが)という率直な疑問が残るのと、第一発見者でしかも一人で部屋に向かったのだからもっとマシなラップの隠し場所はなかったのかというのはどうしてもひっかかりました。このあたりまで完璧にクリアできていれば満点だったと思います。
更に言うと犯人の心理というのがちょっと分からないですね。両親を自殺に追い込まれたのは同情しますが、せっかく自分が3年もの時間をかけて血のにじむような努力をして築き上げてきた合宿所なら、なぜ正々堂々と戦って守ろうとしなかったのか、実際裁判で不当なクレームとして被害者は何度も負けているようですし、何か弱味を握られていた訳でもないのにそこでなぜ口を封じるという行動に飛躍するのがどうしても解せませんでした。両親のコンセプトを継いでというなら尚更ですよね。何か前半の犯人の土下座までしてチャンダニを守ろうとしていた描写と解決編での落差があまりにあり過ぎて、大いに違和感を感じました。
以上心理面で少ししっくりこない部分もあったのですが、本格ミステリーとしては完成度が非常に高いので、自信を持ってオススメできる30分作品だと思います。オチの蘭がまたスイーツ食べ放題を持ち前の強運で当てるというのも面白かったですしね。
あとは今回のこのクレーマー女ですかね(苦笑) 正直作品見ていて自分が何かされた訳でもないのに絞め殺してやりたい衝動に何度もかられましたが(苦笑)、それだけ悪人を描くのが上手かったということだと思います。
それにしても最近この手のクレーマーとかモンスターペアレントというのが社会問題として話題にのぼることも多いので、考えさせられる話でした。こういう人物には正直毅然とした態度を見せるしかないのかなと思います。
それと発見された時に来ていた部屋着すごかったですよね。肩のあたりに炎のようなものすごい模様が入っていたような(苦笑)