(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 片寄王三郎(68) 片寄荻人(35) 片寄野笛(32) 中北楓(8) 須坂衛子(48) 巡査 中北紅葉 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 片寄家当主 片寄家長男 片寄家長女 片寄家養女 片寄家運転手 巡査 中北楓の母親? |
高山みなみ 山崎和佳奈 小山力也 茶風林 高木渉 浦山迅 斎藤志郎 皆川純子 こおろぎさとみ 光明寺敬子 三戸耕三 声の出演なし |
予想より美味しくしかも安いランチを食べることができ、満足そうな様子で見事に黄色く色づいたイチョウ並木を歩いていた小五郎、蘭、コナンの三人。
ところがそんな満ち足りた気分がいっぺんに吹っ飛んでしまうような事件が目の前で発生します。公園を出てすぐの横断歩道の所で小学生ぐらいの子供とその付き添いの女性の二人が、猛スピードで突っ込んでくる青い車に危うくはねられそうになったからでした。
間一髪の所で二人は車を避けて難を逃れますが、あろうことか青い暴走車は急停止したかと思うとそのままUターンし、再び二人目がけて突進してきたのです!!
しかし今度はコナンがどこでもボール射出ベルトとキック力増強シューズを使い車にボールを直撃させて何とか二人が車に轢かれるのを阻止…しかし車はそのまま次の角を曲がって逃走していってしまったのでした。
それから小五郎たちは二人を助けたお礼にと彼らの住む屋敷に招かれることとなります。有名な名探偵の毛利小五郎に助けられたのならぜひお会いしてお礼が言いたいと彼女が仕える屋敷の主人が言っているというのでした。
車を運転している女性は名前を須坂衛子といい運転手らしいのですが、何と彼女が勤めているというのが片寄王三郎という不動産王として知られる有名な資産家だったのです。そしてコナンが救った子供の方は中北楓といい両親が交通事故で亡くなったため、片寄氏が北海道の親戚から引き取ったばかりの女の子でした。
片寄氏の屋敷は小五郎もよく知る有名な紅葉御殿で、立派な門構えを通り車が敷地内に入るやいなや赤とオレンジ、そして黄色の色とりどりの紅葉が小五郎たち三人を出迎えます。そして和風に造られた屋敷の中も襖絵に紅葉の絵がびっしりと描かれていて、まさに紅葉御殿の名前にふさわしいこだわりようだったのです。
屋敷に入ると玄関の所で長女の片寄野笛、続いて長男の片寄荻人が姿を見せ、楓たちが不審な青い車に襲われたことを聞かされます。ところが客が名探偵の毛利小五郎だと知るととたんに二人は醜い言い争いをはじめ…
どうやら二人はどちらも亡くなった母親の連れ子で父親の片寄氏とも血が繋がっていないらしく、そのためかお互いに兄妹とは思っていない様子…こんな家ではきっと何か事件が起きる…という長女・野笛の言葉も実際ありえない話ではないとコナンも呆れるばかりだったのです。
それから小五郎たちは運転手の須坂の案内で主人の片寄王三郎に会うために屋敷の奥へと案内されます。屋敷の廊下の先がどこまでも続いているのか分からない広々とした空間に小五郎もただただ驚くばかりでしたが、そう思って先頭を歩いていた小五郎が突然何かにぶつかり…。
何と小五郎がぶつかったのはトリックアートという絵で描かれた廊下で、視線の先に長い廊下があるように見せかけて描かれたものだったのです。片寄王三郎の趣味だというのですが、楓がそのトリックアートで描かれた障子を更に開けると……何と屋敷の中にもみじの森が広がっていて…。
その見事な景色に小五郎も蘭も感嘆の声を上げますが、コナンがよく見てみると手前のもみじは本物なものの、奥のはやはり絵で描かれているという実物と絵を織り交ぜて作った不思議な空間がそこには広がっていたのでした。
小五郎たちが部屋の景色に心を奪われているといつの間にか須坂と楓の姿が見えず困惑する三人でしたが、そのまま先へと進み奥の両開きの扉を開けようとします。ところが押しても引いても扉はビクともせず…
そこは何とかコナンの一言で扉を開けることに成功しますが、するとようやくまっすぐ続く回廊の先に片寄氏のもとと思われる離れの部屋があるのを発見します。そして扉の前まで来ると中からどうぞという言葉が聞こえたため、小五郎は扉を開けて中へ。
するとその先に短い紅葉の襖絵の廊下が続き、すぐ左手の襖を開けると大きな部屋に出ますが、部屋の中には小さな小屋のような建物が建っていました。そしてその扉が開くと、ようやくという形で当主の片寄王三郎と対面することができたのです。
片寄王三郎はまもなく70歳になろうかという老人で、足が悪いのか病気のせいなのか車椅子に乗っていました。そして今回楓が襲われたことを聞き、故あって自分の所に引き取ったものの今は後悔している、出来の悪い子供たちを煽ってしまって…と楓の行く末をひどく心配している様子でした。
それから小五郎たちは紅茶に楓のふるさとの牧場から取り寄せたというミルクを入れたミルクティーを楽しみますが、そこで王三郎は折り入って相談したいことがあると小五郎に話を持ちかけます。
もっともあいにく王三郎は3時から先約があるらしく、それを終えてから互いに酒を一献傾けながらということになり、それまで小五郎たちは応接室で待つこととなります。
応接室へと移動した三人は目の前に広がる本物の庭園に広がる見事な紅葉を眺めながらしばし待つこととなりますが、その後小五郎と蘭は運転手の須坂から王三郎は病気でもう長くはなく、本人もそれを覚悟していることを伝えられます。
一方コナンはというと、楓に連れられて庭園の奥にある大きな木の上に作られた楓の家へと招待されたのですが、すると家へと向かう縄ばしごにナイフで切られた痕を発見…確かに楓は狙われているのだとコナンは確信します。
それからコナンは楓の要望で庭園の所で二人でサッカーをすることになります。ところが強く蹴ったボールは楓の額に当たって何と王三郎のいる部屋の障子に当たってしまいます。
「すいません」と謝りつつコナンは慌てて部屋の近くまで向かったものの、中からは何の応答もなく…妙だなと思いコナンが屋敷の方へと耳を傾けていると、部屋の中から唸り声が…慌ててコナンが障子を開けてみると、中では王三郎が倒れていて……
部屋のテーブルの上に置かれたミルクティーのカップからはまだ湯気が出ており、犯人がまだ近くにいるに違いないとコナンは急ぎ離れから渡り廊下の方へと向かいます。ところがそこには蘭がいて、離れからは誰も出て来なかったと証言。王三郎に会うために誰かが離れの部屋に来ていたはずなのに、いったいその人物はどこへ…!?
昼食の帰り道に不動産王として知られる片寄王三郎の養女・中北楓と運転手の須坂衛子の二人が暴走車に襲われそうになった所を助けた小五郎たちは、お礼が言いたいという王三郎の求めに応じて彼の住む通称紅葉御殿へ招待されます。
紅葉御殿はその名の通り見事な紅葉に包まれた和風の屋敷でしたが、屋敷の中も襖絵が紅葉で描かれ一部にはトリックアートも使われて遠近感を出すなど、随所に王三郎のこだわりが見られる珍品でした。ところがそんなこだわりの趣味を持つ王三郎にも大きな悩みがあったのです。
それは両親が交通事故で亡くなったという中北楓の行く末…彼女を引き取ったがために、彼の亡き妻の連れ子だという長男・片寄荻人と長女・片寄野笛との間にただならぬ不穏な空気が流れているというのでした。そしてまさしくそのことについてなのか、先客と会った後に小五郎に相談したいことがあるというのです。
そのような訳で小五郎たちの目の前からいったん姿を消した王三郎でしたが、ところがコナンと楓が庭先でサッカーに興じていると王三郎の部屋の方から唸り声が聞こえてきて、慌ててコナンが中の様子を見てみるとその王三郎が毒殺されていたのです!
しかもコナンが犯人を追って渡り廊下に向かうとそこには蘭がいて、怪しい人物は誰も通っていないと証言…王三郎のいた離れの部屋は完全な密室だったことが分かり…
さあ傘をすぼめよう
東に沈む夕日を
ながめよう
紅葉を支える
二本の竿を見よう
より長い竿を探ろう
そこに我が紅葉の夢が
眠っているだろう
鎌倉の鶴岡八幡宮にある参道の名前。この八幡宮をモデルにしたという片寄王三郎氏の紅葉庭園は、幅を少しずつ狭くしているため遠近法で参道がうんと長く見えるように設計されているらしいです。
錯視の一つで、水平な横線より垂直な縦線の方が長く見える目の錯覚をいいます。
一番分かりやすいのはアルファベットの「T」の時で、縦棒と横棒を同じ長さにした場合、縦棒の方が長く見えるように感じるのです。
今回の事件は紅葉の時期にまさしくピッタリの内容でしたね。個人的に近年よく紅葉見物に行くようになったので、こういう作品を見るとまたより一層紅葉見物がしたくなってしまいます(苦笑)
そしてミステリーの方は何とも複雑なプロットになっていて、かつ3人もの登場人物が亡くなってしまうというすごい展開でした。まあ中途半端にあの長男長女の二人を生かすと遺産が入ってしまうのでこういう展開にしないと仕方ないのかもしれませんが、残った一人も殺人罪で刑務所行きと、それにしてもため息しか出ない結末でした(苦笑)
王三郎が二人の義理の子供を陥れるために他殺に見せかけて自殺し、長女は長男に襲われたフリをして遺産を独り占めしようとしたがそれを逆手に取った長男に殺害され、長男はというと楓の命を再三狙い自分を陥れようとした長女を殺害した挙句に王三郎を殺したと勘違いした運転手に殺害されと…もうここまで来ると悲劇としかいいようがないですよね。
まあ二人の義理の子供がどちらも連れ子で、いろいろな女性に手を出して複雑な家庭環境を作ってしまった王三郎の自業自得といえばそれまでなのですが、巻き込まれる家族はたまったものじゃないです。なので最後の中北紅葉という女性の登場も何ともいえない複雑な心境で見てました。写真を見て察してくれと言ってましたが、楓は王三郎と紅葉との間にできた隠し子ということなんですかね。本当に重い話です(苦笑)
ただ今回はスプーンの伏線で部屋には王三郎以外いなかった、従って他殺ではない=自殺を推理できるあたり、この伏線はなかなかだと思いましたね。本格謎解きとしてはこれだけでも正直十分ポイントが高いと思います。あとはもう少しこの結末のやり切れなさだけ何とかしてもらっていたら、大満足だったと思います。