(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 高木刑事 小倉功雅(49) 大橋彩代(28) 西津徳盛(51) 谷中篤(47) 大橋 鑑識員 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 ラーメン店店長 アルバイト 不動産会社社長 理髪店店長 商店街側の弁護士、彩代の父親で先月死去 鑑識員 |
高山みなみ 山崎和佳奈 小山力也 茶風林 高木渉 魚建 平松晶子 島香裕 鈴木勝美 声の出演なし 椙山貴夫 |
空手の大会が近く明日は学校も休みだから泊まり掛けで練習する……蘭からそのような連絡をもらった小五郎はコナンとともに晩御飯をどうしようかと悩むことになります。
なぜなら蘭からは事務所1階の喫茶ポアロで済ませて欲しいと言われたもののマスターが町内会の人たちを誘って温泉に行っており不在…同様の理由から事務所の近所の飲食店は軒並み休んでいたからでした。
仕方なくコナンが持ってきたポストに入っていた食べ物屋のチラシを眺める小五郎。江戸前寿司の鳥光、味噌カツの坪内、広島風お好み焼きの近藤…どれもこれもイマイチ気分が盛り上がらない小五郎でしたが、とそこで小五郎の目に一枚のチラシが飛び込んできます。いったいそのチラシとは…!?
「死ぬほど美味い 小倉ラーメン」─少し歩いて二人が向かった先にあったのはいかにも年季の入った店構えのラーメン店〈ラーメン小倉〉でした。チラシの写真はきれいだったのに…と文句の一つでも言ってやりたい気分でしたが、その一方で大人気のラーメン店の店構えは得てしてこんなものであるし、こんな寒い日はラーメンで暖まった方がいいという小五郎の言葉にコナンも一応納得し店の中に入ることとなったのです。
店内に入るとこのラーメン店の主人である小倉功雅の威勢のいい声に出迎えられる二人でしたが、店内には誰も客がいませんでした…。それでもカウンター右端の席に腰掛けようとする二人でしたが、すると小五郎の座った席はこの店のお得意さんの席らしく仕方なくその左に座ったコナンの更に左側に腰掛けることになります。ただその常連さんというのは先月亡くなっているらしく店主のわがままで席を空けておきたいという話なのですが…
小五郎たちが席に着いたちょうどその時、トイレからこの店の店員と思われる若い女性が出てきます。彼女は名前を大橋彩代といいこの店のアルバイトでしたが、小五郎たちの姿を見つけるなり残念そうな表情に…。どうやら彼女と店主はこの日の客の数が2ケタに乗るかどうかで賭けていたらしく、小五郎たちが来た事で2ケタに乗り賭けは店主の勝ちとなったようでした。
そろそろ閉店時間なのにようやく2ケタと聞き苦笑いする小五郎とコナンはこの店は本当に大丈夫かと不安になりつつも、彩代の勧めるままにこの店一番の「死ぬほど美味い」といわれる閻魔大王ラーメンを注文しますが……
しかし実はこの店に客が入らないのは「ある理由」があったからでした。コナンがその後トイレで用を足して手を洗って外に出ようとしたその時、店主の小倉の「テメェ!!何しに来やがった!? あんたに食わせるラーメンはねぇ!!」という怒鳴り声を聞き何事かとコナンがトイレのドアを開けると、そこにはメガネにパンチパーマのいかにも柄の悪そうな中年の男が立っていて…
男は名前と西津徳盛といい不動産会社の社長らしいのですが、どうやらこのラーメン店に客が入らなくなったのはこの男が自分の会社の血の気の多い若い人間たちを使って、食器を割ったりなどの嫌がらせ行為をして事あるごとに騒ぎを起こしていたからだったのです。
そんな西津は当然この店から歓迎される訳もありませんでしたが、図々しくもコナンの右隣の先月亡くなったお得意さんの席に腰掛けると、店主に対しこの店を売る気になったかと訊ねます。どうやら西津はタチの悪い地上げ屋でこの店を含めた杯戸商店街の近辺の敷地を買い占めて大きなショッピングモールを建てようと企てているのでした。
しかしそんな西津たち地上げ屋の企みに杯戸商店街の人達は集会を開いて一致団結して戦う事を決めたらしく、ラーメン小倉も同様に西津たちの言いなりになるつもりはないとはっきりと売却を拒否したのです。
それから店には同じ杯戸商店街で理髪店を営む谷中篤という人物が店を訪れますが、彼もラーメン小倉と同じく西津の地上げ行為に対して徹底抗戦を考えている一人でしたが、ちょうど彼が閻魔大王ラーメンを注文した頃に小五郎たちのラーメンが完成してアルバイトの彩代の手でどんぶりが運ばれてきます。
すると閻魔大王ラーメンという名前のラーメンにはメンマがたくさん乗っていて最初は驚いた小五郎とコナンでしたが、いざ食べてみるとそのメンマが抜群に美味しくこんなの食べたことがないと二人は絶賛の嵐。今度蘭や阿笠博士も誘って来ようと早くもリピーターを宣言してラーメンにパクついていたのです。
その姿を横で見ていた地上げ屋の西津はこれは当然潰れそうにないと突然弱気な表情に…更に自分の会社は火の車で死にたい気分なのにと愚痴をこぼしつつ運ばれてきたラーメンを見て、こいつを食ってマジで人が死んでくれたらこんな店すぐに潰れるのにと縁起でもない事を言い出したのです。
更に「いっそ…毒でも仕込むか」と言い出す西津に、ついに小五郎がブチ切れ…彼の胸倉をつかんで表に出ろと怒鳴り出したのですが、ところがちょうどその時西津は急に苦しみ出したかと思うとそのまま床に倒れて動かなくなり……
蘭が空手の大会が近いため泊まり込みで練習することになった煽りを受けて晩御飯を自分たちで何とかする羽目になった小五郎とコナンの二人。喫茶ポアロをはじめ町内の主だった飲食店が町内会の温泉で休みを取る中で仕方なくチラシを見ていた中からとある店を選んで杯戸商店街を目指すことになります。
ところがチラシではきれいな写真だったそのラーメン小倉というラーメン屋は、実際訪れてみるとオンボロの外観で今にも潰れそうな年季の入った店構え…しかも中に入ってみると客はまったくおらず、二人が大丈夫かと不安になるのも無理はありませんでした。
しかし小五郎たちがラーメンを実際に食べてみるとこれがやみつきになる美味しさ……実はこの隠れた名店に客が来なくなったのは、杯戸町で不動産会社を経営する西津徳盛という男が杯戸商店街の敷地を買占めてショッピングモールを作るため、会社の社員を使って店で暴れたりなどの嫌がらせ行為をしていたという別の理由があったのです。
もっとも商店街の人たちの結束は意外にも固く、西津徳盛が思うように上手く進んでいない様子……小五郎たちの後に店を訪れた西津はラーメンが運ばれてくるとこのラーメンを食べて人が死んでくれたらすぐに店が潰れるのにとか、いっそ毒でも入れてなどと縁起でもないことを言い始めます。
ところがそんなふざけた言葉の数々に堪忍袋の緒が切れた小五郎が西津をとっちめようとしたその時、ラーメンを口にした西津が突然苦しみ出して……
まず冒頭の喫茶ポアロを含めた事務所近辺の店が軒並み休みになっているシーンで、ポアロの入口に「都合により4日から5日までお休みさせて頂きます。 ポアロ店主」と貼り紙がアニメでは追加されています。
更にその直後には、何と毛利探偵事務所の隣にあり名前は頻繁に出てきているのに、作中ほとんど話題に出て来たことのないあの「いろは寿司」について小五郎が言及するシーンが追加されています。こちらも同様に「本日休業 いろは寿司」と貼り紙が出ているのですが、これはファン必見かも(笑) しかもいろは寿司登場の影響を受けてかコナンが持ってきたチラシの最初が江戸前寿司の鳥光からピザ専門店のコロッセオに変更されているなどかなり細かい変更もありますね。
それ以外にも細かい部分でセリフが追加されていたりと、原作では2ページの内容ですが、アニメではかなり演出に力が入っている印象を感じました。
OP後はまずラーメン小倉の店構えに小五郎が驚くシーンから再開しますが、ここでこの店のすぐ左隣に「CUT HOUSE TANINAKA」の白地に黒い文字の看板がアニメでは追加されています。谷中氏の店は原作では西津の口から隣にあるとは出ていますが、それが忠実に再現されていますね。
そしてラーメン店に入ると原作では店主は普通にカウンターに立っているのですが、アニメではカウンター席に座って競馬新聞を読んでいました。更に店内ですがアニメではより古めかしい感じが強調されているというか(苦笑)、その一方で「閻魔大王ラーメン」とデカデカと文字の入ったポスターが壁に貼られていてすごいインパクトを感じます。
更に小五郎とコナンがラーメンを食べるシーンも結構時間をかけてじっくりと描かれていますよね、ここも美味しそうにラーメンを食べる姿が活き活きと描かれていていい感じでした。
それ以外に関しては細かいセリフの言い回しの変更や追加はありますが、ほぼ原作に忠実な流れで前半は原作の1話目までストーリーは進行していきます。
後半は原作第2話目の冒頭からスタートしますが、まず小五郎と容疑者たちが警察の現場検証のため外に出される直前に閻魔大王ラーメンとつけ麺のメニューの貼り紙が出ているシーンが原作アニメともにあるのですが、ここでアニメでは閻魔大王ラーメンの貼り紙がはがれて落ちるという演出が加わっています。更につけ麺の値段も原作では500円ですがアニメではなぜか550円に値上がりしていますね(苦笑)
それ以外は後半も細かいセリフの変更や追加、若干のカットなどありますが、ほぼ原作に忠実な構成で目暮警部が現場検証を終えて店を出てくる直前までストーリーが進行していきます。
後編の前半は目暮警部と高木刑事が現場検証を終えて店の外に出てきた原作第2話目の真ん中あたりから再開しますが、小五郎が眠りの小五郎になるシーンの演出が凝っている(笑)ぐらいで、それ以外はほぼ原作に忠実な構成で持ち物の再検証のシーンまで進んでいきます。
そして解決編の後半についても、こちらも特筆すべきことがないほど原作に忠実な構成でエンディングまで進んでいきました。全体的に演出が素晴らしい前後編だったと思います。
小五郎が探偵を務める毛利探偵事務所のビルの右隣にある寿司屋の名前。事務所の外観が遠目から映されるとほぼ確実に毎回出てくる店ですが、事務所下の喫茶ポアロに比べると意外にも作中で語られることは少ないお店です。アニメのみですが、今回は珍しく小五郎が名前を挙げていました。
杯戸商店街の一角に店を構える安い早い美味いがモットーのラーメン屋。小五郎とコナンが店を訪れた時には店主の小倉功雅とアルバイトとして大橋彩代が働いていました。
20年前に店を出してから一度も改装をしていないため店構えはボロいものの味はピカイチで、特に「死ぬほど美味い」と言われる閻魔大王ラーメン600円が店の名物のようです。他にも一応ミソとかつけ麺500円(アニメでは550円)もあるようです。
「死ぬほど美味い」と言われるラーメン小倉の名物であるメンマがてんこ盛りのラーメンで値段は600円。小五郎たちも西津も谷中も全員このラーメンを注文し、小五郎とコナンも「クセになる味」だと絶賛する美味しさでした。
ネーミングはメンマとエンマをかけたものらしくそのメンマに美味さの秘訣があるようですが、もちろん企業秘密なのだそうです。
小五郎たちと西津の後に店にやってきた谷中篤の経営する理髪店で、ラーメン小倉のすぐ隣に店を構えています。商店街には20年前にラーメン小倉と同時期に店を出したらしく、三度も改修工事を経て現在も商店街で運営を続けています。
今回はラーメン屋を舞台に発生した毒殺事件でしたが、まず最初に個人的には演出がすごく良かったと思いました。
冒頭のお店探しの際にいろは寿司が追加されていたのもファンには嬉しい演出でしたし、それにラーメン小倉の登場の仕方がまたいかにも風変わりな店だという感じを的確に描いていていい感じでしたね。
そして店に入ってからも何とか晩飯にありつこうとラーメンに期待する小五郎たちとそれを裏切る店構えのラーメン店とのギャップに悩む姿が実に活き活きと描かれ、最後にガッカリしかけていた二人をいい意味で裏切る形で美味いラーメンが登場します。
この時の実際にラーメンを食べた時の小五郎とコナンの表情が、これは原作にもありましたがすごくいい笑顔でした。この一連のシーンを見ているだけで楽しかったというか、見ていてほのぼのとした気持ちになりました(笑)
一方トリックについては結露のあたりはさすがにヒントで分かった方も多いとは思いますが、理髪店でメガネのすり替えがあったというのは盲点でしたよね。この組み合わせで不可能犯罪を見事に構成しています。よく考えられた心理トリックだったと思います。
ただ動機についてはちょっと谷中氏が西津氏を殺す理由があまりに弱い気がしたのは事実です。とくに西津を殺さなければ守れないものがある訳でもなさそうでしたし、追いつめられた状況などもありませんしね。
そして最後にこれだけは触れておかなければと思ったのが、今回の被害者の名前です。一見西郷隆盛を彷彿とさせる格好いい名前のように思えますが、「西津徳盛」で「サイズ特盛」ですか(笑) あまりにツボにはまってしまってしばらく大笑いしていました。
まあ架空の人の名前なので別に良い悪いを論じる気はサラサラありませんが、しかしこの名前思いついた方は笑いのセンスあるなあとそんな感想です(苦笑)