(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 目暮警部 高木刑事 千葉刑事 鈴木園子 京極真 世良 昼川利子(49) 男性 女性 上住貞伍 ホテルマン カフェの店員 担任 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 捜査一課刑事、目暮の部下 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 杯戸高校空手部 主将 謎の探偵、截拳道の使い手 主婦、振り込め詐欺の被害者 振り込め詐欺の被害者 振り込め詐欺の被害者 杯戸ホテルオーナーの息子で振り込め詐欺の首謀者 杯戸ホテル フロント ケーキバイキングを開催していたカフェの店員 帝丹高校2年B組 担任 |
高山みなみ 山口勝平 山崎和佳奈 茶風林 高木渉 千葉一伸 松井菜桜子 声の出演なし 日高のり子 達依久子 塾一久 さとうあい 声の出演なし 隈本吉成 蓮池龍三 菅原淳一 |
その日蘭と園子はコナンを引き連れて、杯戸ホテルで開催されているケーキバイキングに参加しようとバスに乗り移動している最中でした。
混雑するバスの中で吊り革につかまりながら蘭が空手の関東大会で優勝した話で盛り上がる二人でしたが、この日はその蘭の関東大会での優勝のご褒美に園子がケーキをご馳走する約束になっていたのです。
ところが蘭の優勝の話で盛り上がっていたはずが、いつの間にか新一の話題に…園子は蘭に優勝報告のついでにロンドンでの一件での返事はしたのかと問いただしますが、蘭は優勝報告もメールで済ませたため返事はまだだと言葉を濁します。すると園子はボヤボヤしていると新一が心移りしてしまうかもしれないし、ある日突然、蘭に強力なライバルが現れるかもと蘭を慌てさせるような事を言い出したのですが……
とその時でした。突然チカンに遭ったことに気づいた園子は自分のすぐ隣にいた帽子の若者の手をつかみチカンに遭ったと叫びます。すると若者は「あ、いやボクは…」と何か言いかけますが、しらばっくれても無駄だと蘭に懲らしめるように頼みます。すると蘭はお得意の蹴りを若者にお見舞いしようと蹴り足を振りかぶり…。
ところがその若者、蘭が振りかぶった所で蹴り足をトンと足の裏で止めたかと思うと、次の瞬間左から強烈な突きを繰り出します。何とかそれを間一髪で交わした蘭でしたが、今度は右からの強烈な回し蹴りが…それを受けたらヤバイと瞬時に悟った蘭は何とか体を反らしてその蹴りを交わすことに成功しますが、その若者が截拳道(ジークンドー)という武術の使い手で油断ならない相手だとすぐに見抜きます。
本気になった蘭は園子に離れるように促しますが、そこでコナンがその若者がチカンではなくチカンを働いていた犯人の手をつかもうとしていただけだと蘭たちに説明すると、ほどなく本物のチカンがあぶり出されて事件は一件落着。よく確かめもせずに蹴りかかってと蘭はその若者に平謝りしますが…
大丈夫大丈夫!誤解が解けてよかったと、その若者は蘭たちに気にしないように言いますが、そこへ更に蘭に「君、ボクのタイプだから…許してあげる…」ととんでもない事を言い出します。さすがにこれには横で聞いていたコナンも敵対心をあらわにし睨みつけますが、そんなコナンに対し若者は「さっきはサンキューな! ボウヤ…」と屈託のない笑顔を見せたのです。
そんなチカン騒ぎが無事解決すると蘭たちは予定どおり杯戸ホテルを訪れます。ホテルには先ほどの若者も予約を入れていたらしく姿を見せていましたが、どうやら杯戸ホテルでは今幽霊騒ぎが起こった影響で別館が改装中となっており、その予約はキャンセルされるはずが何かの手違いでされていなかったらしく、若者は何とかならないかとフロントに詰め寄っている所でした。
一方蘭たちはその若者と京極真が戦ったらどちらが強いかとか、若者が使っていたのが截拳道というカンフーに様々な武術の技を取り入れたものであるなどといった話をしながら、ケーキバイキングの開催されている2階を目指しエレベータの方に向かいます。
するとエレベータの中からは中年の女性が一人で出てきて、コナンにこのエレベータは別館ので2階には行けないと教えてくれます。女性は名前を昼川利子といい、その後彼女の元にやってきた連れの二人とのやり取りから三人は何かの事件の被害者で、彼女が一人で加害者の人間に会いにいきその罪を認めさせることに成功したような雰囲気でした。
それから蘭たちは2階のケーキバイキングの会場へようやくたどり着きますが、何と予想以上の客が詰めかけてケーキの数が足りなくなり、既に締め切ってしまったという残念な結果に…。これに対し園子はケーキバイキングをやるなら前もってドーンと用意しておきなさいよと係員に苦言を呈します。ところが次の瞬間…
突然「ドォーン」という大きな音がホテル内に響き渡ったかと思うと、次の瞬間女性の大きな悲鳴が。これはただ事ではないと悟ったコナンは悲鳴の聞こえた駐車場の方へと駆け足で向かいますが、現場には先ほどコナンたちとすれ違った昼川利子とその連れの二人が立っていて何かを凝視している所でした。
そして三人の見つめる先には大量の血を頭から流してうつ伏せに倒れている男の姿が…昼川利子の話では車をバックさせた途端に上から人が落ちてきたというのです。
しかし事件はそれで終わりではありませんでした。昼川利子の連れの二人が見たことがある顔だと男の顔を覗き込んでいるその時、昼川利子が幽霊騒ぎで改装中のため誰もいないはずの別館の屋上に変な人影を見たというのです。
それを聞いたコナンはすぐにコナンを追いかけ現場にやって来ていた蘭に警察を呼び警備員と一緒に現場を見張っているように言い残すと、昼川利子とその連れ二人を連れてエレベータで変な人影を見たという別館の屋上へと向かいます。すると屋上には…
コナンたちが屋上に到着すると屋上の端には上着の上に靴が置かれていて、それを見た昼川利子とその連れは先ほどの男がそこから飛び降り自殺をしたのだと話しはじめます。しかしそれに対しコナンが何か言いかけた所へ、突如先ほどの截拳道の使い手の若者が現れて…
蘭の空手の関東大会優勝を祝って杯戸ホテルで開催されているケーキバイキングに行くことになった蘭と園子、それにコナンの三人。その途中バスに乗っている時にチカン騒ぎが勃発し帽子をかぶった若者が犯人と間違われますが何とか誤解が解けて真犯人が見つかり事件は無事解決します。しかしその若者、截拳道を駆使して蘭と互角に戦うほどの実力の持ち主で…いったい何者なのでしょうか!?
その後杯戸ホテルに無事到着した三人はケーキバイキングに向かいますが予測を超える客の殺到に既に締め切られた後…ガッカリする中で突然事件が勃発します。
突然大きな音がしたかと思うと女性の悲鳴が聞こえてコナンはすぐに悲鳴の聞こえたホテル別館横の駐車場へと駆けつけます。すると駐車場にはケーキバイキングに向かう際にエレベータの前で出会った昼川利子という女性とその連れの三人が立っていて、彼らの視線の先には別館の屋上から転落したと思われる若い男の無残な姿が…
それからコナンは屋上に人影を見たという昼川利子とその連れを伴い別館の屋上へと向かいます。すると屋上には転落死した男のものと思われる上着と靴が置かれていました。
一見すると自殺とも思える状況でしたが、コナンはすぐに他殺だと確信します。ところがそう考える人物がもう一人いたのです。それはバスの中で知り合ったあの截拳道の使い手の若者…しかもその若者、世良と名乗り自分も探偵だというのですが……
まず冒頭の蘭と園子とコナンが乗っていたバスですが、原作では行き先はありませんが、アニメでは杯戸駅行きと明記されていました。
そして前半部分についてはチカンがバスを下りて走り去っていく時にバス停にぶつかってから慌てて逃げ去っていく演出が追加されていたりしますが、それ以外はほぼ原作に忠実な構成で原作1話目の最後までストーリーが進んでいきます。
後半は原作第2話目目暮たちが2階に移動し千葉刑事に声をかけ、更に置いてあった電動車椅子をコナンと世良が調べる所までですが、こちらも世良の「ワクワクしてきたなボウヤ!」という言葉に目暮が「言葉を慎みたまえ、人が一人亡くなっているんだぞ」とたしなめるセリフが追加されている、被害者の名前の呼び方が原作では貞伍さんになっているのがアニメでは上住さんになっている他は、細かいセリフの追加や変更などあるものの、ほぼ原作に忠実な構成で最後まで進んでいきます。
そしてエンディングの手前には前編の総まとめ的なコナンのナレーションが追加されており、結構複雑な事件ですが分かりやすくまとめてくれていて、後編にすんなり入っていけるように工夫がされています。
後編は目暮たちが別館2階に移動し電動車椅子を調べている千葉刑事に声をかける部分からで前編の後半と少し重複しています。そして前半はコナンによる推理がスタートする所まで進んでいきます。
その後は細かいセリフの追加や変更、カットなどありますが、ほぼ原作に忠実な構成でラストまで進んでいきます。前編後編ともに原作に大変忠実な構成かつ、ヴィジュアル的に分かり易い演出が所々に加わっているので存分に楽しめると思います。
塚本数美は帝丹高校3年生で空手部の前主将、蘭の先輩あたる人物です。361-362「帝丹高校学校怪談」で初登場し、その後592-593「猿と熊手のトリ物帖」で問題の胴廻し回転蹴りを蘭は彼女から伝授されました。
今回初登場した探偵の世良が使いこなす武術の名前。映画スターのブルース・リーが小さい頃からやっていたカンフーに空手・ボクシング・柔道・サバット・合気道などの色々な技を取り入れた武術です。
型などの機械的な暗記に捉われずに、また目や喉などの急所への攻撃などより実戦を意識した効率的な戦い方を目指す武術です。
32歳の若さで亡くなった香港の映画俳優で、アクションスターの代名詞として今なお根強い人気があります。武術家としても有名で截拳道(ジークンドー)を創始したことでも知られています。
代表作は初主演映画「ドラゴン危機一発(1971)」のほか、第2作「ドラゴン怒りの鉄拳(1972)」、第3作「ドラゴンへの道(1972年)」、それに彼の死後公開され世界的な人気を不動のものとしたハリウッド主演作「燃えよドラゴン」があまりにも有名ですよね。
この日は2Fでケーキバイキングを開催していて蘭と園子はそれに参加するつもりでした。
ちなみにコナンでは杯戸シティホテルという名前のホテルが76「コナンvs怪盗キッド」、File116-117「ミステリー作家失踪事件」、176-178「黒の組織との再会」、608-609「裏切りのホワイトデー」とこれまで何度も登場していますが、調べた限りでは杯戸ホテルというのは今回が初めてのようです。
今回は灰原哀以来とも言われる久しぶりの本格的な新キャラクターの登場となりました。名前は世良で截拳道の使い手であり探偵でもあるというこのキャラクターですが、原作で初登場して以来その魅力的なキャラクター像からずっと人気が高くてアニメでの登場を心待ちにしていた方も多かったことと思います。
ちなみに今回の作品ではラストに男だと思っていたのが実は女性キャラだったというサプライズがあるので、一応事件ファイルではそれに沿った形でネタバレにならないように気を使っているつもりですが、確かに最初は男だと思われていたので世良という名字を名乗るまでは彼とか少年という表現でもよかったのですが、それだとウソをついていることになるので「若者」という表記であらすじは何とかごまかしておきました。このあたりが文章で書く時の難しさですよね(苦笑) ところが結局最後のコントで「世良真純」と自己紹介してしまっているので参りました(苦笑)
そしてこの次の回でいろいろと明らかになってくる彼女のキャラクター像ですが、園子が次回の冒頭で述べるとおり明るくて気さくでボーイッシュでカワイイ、その上截拳道の使い手で女探偵、と表現されている通りでファンがすぐにつくのも頷けるキャラクターだと思います。服部平次と同じで何かこう居てくれるだけで場が明るくなるようなそんな存在ですよね。
その一方でこのキャラクターまだまだいろいろと謎の部分も多く本当に信用していいのかとか、コナンをやたら意識している点など気になりますよね。そして何といってもコナンで新しいキャラが出るとどうしても名前に目がいくと思うのですが、これについては今回はガンダムファンなら非常に分かり易かったと思います。これはおそらくセイラ・マスに由来していると考えて間違いないでしょう。
ファーストガンダムでホワイトベースのクルーの一員として活躍するアムロの憧れの存在でもあった彼女ですが、実は本名はアルテイシア・ソム・ダイクンといいあの赤い彗星シャア・アズナブルの実の妹なんですよね。
そうなるとシャアと関係のある名前を持つ赤井秀一(赤い彗星とシャア担当声優の池田秀一氏に由来)や沖矢昴(シャアの本名キャスバルに由来)との関係が当然気になる所ですが、個人的には赤井秀一ととても雰囲気がよく似ているのが気になっています。特に目が似ているなあとそんな印象を持っているのですが果たしてどうなのでしょうか。今後を見守りたいと思います。
そんな新キャラ登場に沸いた今回の作品ですが、ミステリーとしてもトリックが非常に面白くて感心する出来栄えだったと思います。電動車椅子の移動のトリックはもちろんですが、別館6階で大暴れして窓ガラスが割られた所が実は本当の犯行現場だった点とか、両開きのエレベータの特性を上手く使っている点とかは実に見応えがありました。そしてコナンたちが屋上に向かった時に犯人がエレベータを最後に降りたのにもちゃんと理由があったというのは目からウロコでした。
ちなみに両開きのエレベータってそんなにないと思うのですが、自分は一度だけとある場所で実際に出会ったことがあります。その時はそういうエレベータの存在を知らなくてすごくビックリしましたし、その後何度かその場所を訪れた際にも分かっていてもまだ何となく違和感を感じました。まあ違和感を感じるぐらいならいいのですが、コナンのように気づかずにもたれていて突然後ろの壁が開いてビックリして、更に怪我などしたりするようなことのないようには気をつけたいものです。