(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 鈴木園子 京極真 弓長警部 佐倉真悠子(25) 辻元由紀彦(41) 鑑識官 刑事 |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 杯戸高校空手部 主将 捜査一課火災犯警部、小五郎の元上司 ショッププロデューサー ショコラティエ 鑑識官 弓長の部下 |
高山みなみ 山崎和佳奈 松井菜桜子 声の出演なし 徳弘夏生 川村万梨阿 宗矢樹頼 宇垣秀成 三戸耕三 |
世界大会で金賞を受賞した辻元由紀彦のショコラが食べられるとあり、ワクワクドキドキした気持ちを抑えられず思わず女子トーク全開の蘭と園子、それを横で呆れた様子で眺めるコナンの三人。電車を降りると早速東京の一等地に立つ高層ビルに明日オープン予定の彼の店へと向かうこととなります。
辻元の店は名前をル・トレゾール・ド・フリュイ(Le trésor de fruits)といい、鈴木財閥が全面的にバックアップしたこともあって一流の装飾品も備えた洗練されたデザインのショップに仕上がっていました。
しかしそのお店のオープンにあたり多大な貢献をしたのはショッププロデューサーの佐倉真悠子という女性。若くて美人でもある彼女のアシストなくして辻元の成功はありえなかったと言われていて、二人はめでたく結ばれることになるだろうと予想する園子だったのです。
店を訪れた園子たちを出迎えたのは佐倉真悠子で、三人はお店についていろいろと説明を受けつつ店のショコラを見学。どれもキレイで美味しそうで食べるのが勿体無いぐらいとウットリとした気持ちになります。それから真悠子の勧めで蘭と園子がショコラを一つ試食していると、ほどなくショコラティエの辻本由紀彦が姿を現し…。
「メルシー(ありがとう)」「アンシャンテ・マドモアゼル(初めましてお嬢さん)」とフランス語を巧みに使い、更には園子が鈴木財閥の令嬢だと知ると「さすが高貴な気品をお持ちだ」と紳士的な態度で挨拶し席まで誘導する辻元。ところが厨房に戻るなり彼の態度は急変し…
「何だご令嬢って、高校生のガキじゃないか」「まあいい、娘に気に入られれば鈴木財閥から金を引き出すのもたやすくなるだろう」─辻元の正体は人を道具としか思っていないような最低な俗物だったのです。
そんなことは露知らず席でオープニングセレモニーがはじまるのを待っていた園子たち。ほどなく店内のライトが落ち、真悠子の挨拶を経てショコラにライトが当たると辻元がショコラを運びながら姿を現します。
明日のオープン取材で披露するという金賞受賞作で日本初公開となる「ドレスパス(de l'espace) 宇宙(そら)へ」と題したそのショコラは、材料には最高級クリオロ種のカカオとココアバターを使用し、厳選したフルーツを使用した果実酒がショコラの風味を最大限に引き立てているらしく、見た目もまるで彫刻みたいと蘭がウットリするほどの美しさでした。
しかし本番はこれかららしく、「皆様を夢の彼方、遥かな天の川へお連れしましょう」と辻元が宣言すると、ほどなく真悠子から手渡された銀のポッドで何かを注ぎます。
ところが自分の思っていたのとは違うのか、ここで辻元が戸惑った表情を浮かべます。そしてその直後でした、突然メラメラと火の手が上がったかと思うと炎は一気に大きくなり、熱風で吹き飛ばされた辻元は壁際に置かれていた食器棚にぶち当たります。
するとその拍子に棚に飾ってあったアルコール度数の高い酒のビンが床に落ちて割れ、更に大きくなった炎が辻元へと襲いかかり…
それから東京警視庁捜査一課による捜査が開始されます。担当するのは火災犯捜査一係で刑事時代の小五郎の上司でもあった弓長警部。
ところが捜査が進むにつれて衣類の静電気で引火した事故だとする説に傾く捜査陣に、コナンは他に火元がないからと決め付けるのは早いと反論するのでしたが…
世界大会で金賞を受賞した辻元由紀彦が明日オープンするという洋菓子店を訪れた蘭と園子たち。美人ショッププロデューサーの佐倉真悠子のサポートもあり東京の一等地に店を構えることとなった彼の未来には夢と希望が満ち溢れているかに思えたのですが…
ところが園子たちのために明日のオープン取材で披露するという金賞受賞作で日本初公開となる「ドレスパス 空へ」と題したショコラを披露しようとしたその矢先、銀のポッドで水を注ぐとショコラから突然メラメラと炎が…驚いて棚にぶつかった拍子に落ちたアルコールのビンが原因で炎はさらに大きくなり、辻元は火の海に飲み込まれて…
冒頭で電車の車内で蘭と園子が読んでいた雑誌の名前。
辻元由紀彦と佐倉真悠子が東京の一等地に今回オープンすることになった洋菓子店。出来立てを食べてもらうのがコンセプトなのだとか。
日本語に訳すと「果物の宝」という意味のフランス語で、店のショコラがどれも宝石に見立てた形をしているのはこの店の名前にも通じる所があるのだと思われます。
ウオッカの一種でスピリタスというアルコール度数96%という強いお酒に果物を漬け込んで作った果実酒。
今回の事件では棚に置かれていたこのお酒のビンが割れたことが原因で炎が更に燃え広がることになってしまいました。
カカオの種類にはクリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種の3種類があるそうで、中でもクロオロ種が味はいいものの栽培が難しく一番貴重なのだとか。主にカリブ海やスリナム、マダガスカル、それに南米のエクアドルやベネズエラなどで栽培されているそうです。
今回は久しぶりのTVオリジナルの30分作品でしたが、何とTVオリジナルでは初となる弓長警部が登場していましたよね。
小五郎の刑事時代の上司でもある方で、火災犯捜査一係ということで火事となれば当然出番となる訳で本来もっと登場してもよさそうなものですが、個人的にはこの警部に非常に好感を持っているのでオリジナルでの登場は本当に嬉しかったです。ただ…いざストーリーが進むと逆に残念な気持ちにさせられてしまいました。
なぜなら今まで原作で登場した弓長警部って見た目は結構怖そうな感じですが、実は結構キレ者で、かつ非常に人当たりもよく度量の広いというイメージがあったからです。
コナンが子供だからと言ってまったく話を聞き入れないで放り出すような人物ではありませんし、非常に人の意見に素直に耳を傾ける度量の広さを持ち合わせていたはずです。
その点からすると他に火元がないからって静電気の事故って決め付けるのは早いと反論するコナンを「ガキが捜査に口挟むんじゃねえ」と怒鳴りつける弓長警部というのは自分の中のイメージにはまったくないというか、むしろこれとまったく正反対の人物であり大いに違和感があるとしか言いようがありません。こんな粗暴で人の意見を素直に聞かない無能な刑事ではなかったはずです。
オリジナルで登場させるというのはファンとしては登場回数が増えて嬉しいものですが、反面このように原作のイメージを損なう可能性もあるというのを思い知らされた回となってしまった気がします。
あとはガラス越しにあれだけたくさんの野次馬が店の中の様子を見ているのに、その目の前で堂々と麻酔銃撃つコナンって(苦笑)、そういう細かい点を見ているファンも大勢いるので、もう少しそのあたりも不自然さを感じないようにして頂けるとより一層楽しめるかなと思いました。
ただトリックは空気電池という化学を利用した興味深いものでなかなか良かったと思います。テーブルクロスの下に揮発したスピリタスを置いて大きな炎を作り上げたというのもいいトリックだったと思いますね。
そして弓長警部以外のキャラクターについてはいい感じだったと思います。園子のメガネのガキンチョ節も相変わらずでしたしね。
最後に動機については気持ちは分からなくもないものの、自分の人生やり直すことは十分できたはずであまり同情できません。それに蘭は辻元に少し会っただけで印象が違っていたと見抜いている訳ですし、もう少し自分の目で辻元という男の本性を見抜けなかったのかなとどうしても思ってしまいます。まあ恋は盲目とは言いますがね(苦笑)