名探偵コナン661-662「小五郎さんはいい人」

(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)

タイトル
File661-662 小五郎さんはいい人
英題
Kogoro-san is a Good Man
放映日
2012/6/23・6/30(前編・後編)
原題
第75巻
File3「小五郎さんはいい人」
File4「本物の眠りの小五郎」
File5「偽小五郎の名推理」
ジャンル
本格
事件現場
桐谷貴江の経営するアパート4号室 傳川源佑の部屋
管轄
東京警視庁捜査一課(佐藤刑事)
登場人物
江戸川コナン
毛利蘭
毛利小五郎
高木刑事
佐藤刑事
鈴木園子
沖野ヨーコ
世良真純
桐谷貴江(70)
恩田遼平(21)
坂内久実(22)
石亀謙(64)
兵頭順治(28)
傳川源佑(44)
桐谷貴江の孫
男性アナウンサー
女性アナウンサー
鉄刃
比護隆佑
松田左文字
ゴメラ
仮面ヤイバー
本編の主人公、正体は工藤新一
本編のヒロイン、新一の幼なじみ
蘭の父親で私立探偵
巡査部長、目暮の部下
警部補、目暮の部下
鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友
人気アイドル
女子高生探偵、截拳道の使い手で蘭たちの同級生
アパートの大家
大学生、小五郎のニセ者
アパート住人
アパート住人
アパート住人
アパート住人、土木作業員で事件の被害者
九州に住む桐谷貴江の孫娘
男性アナウンサー
女性アナウンサー
「YAIBA」の主人公、剣の達人
ビッグ大阪のFW、元ノワール東京選手
居合い抜き探偵、「探偵左文字」の主人公
大怪獣
子供たちに大人気の特撮ヒーロー
高山みなみ
山崎和佳奈
小山力也
高木渉
湯屋敦子
松井菜桜子
声の出演なし
日高のり子
京田尚子
土田大
中友子
仲木隆司
諏訪部順一
声の出演なし
声の出演なし
竹内栄治
吉田麻実
原作のみ
声の出演なし
江川央生
声の出演なし
???
あらすじ
「いや…毛利小五郎さんはとてもとてもいい方よ!」

 今夜は遅くなるから夕飯はいい…園子と世良真純、それにコナンを伴って帰り道を歩いていた蘭の所にかかってきた小五郎からの電話。小五郎いわく外せない用が入ってしまったからというのですが、一昨日もそうだったらしく最近夜中にばかり帰ってくる小五郎に蘭は徐々に不信感を高めていたのでした。

 愛人でもできたかと園子は冷やかす一方で、世良は浮気調査とかしていたら遅くなることもあるのではと小五郎を庇います。コナンはというと遅く帰った次の日のハブラシに青ノリがついていることから蘭に怒られないように夜中こっそり近所のビアガーデンに行っているのではと推理。ところが仕事もせず家族をほったらかして飲んだくれているのかとかえって蘭の怒りを買うことになり…

 「何が名探偵よ!! 何が眠りの小五郎よ!! ただのダメ親父じゃない」─と怒りの収まらない蘭。そころがそこへ一人の老婆が蘭たちに声をかけてきたのです。

 いや…毛利小五郎さんはとてもとてもいい方よ!─桐谷貴江というその老婆の話では、小五郎は最近毎週のように彼女のもとを訪れて無償で事件を解決しているというのでした。たわいのない失くし物捜しらしいのですが、蘭が小五郎の娘だと聞くとウソだと思うなら今日もウチに来るから確かめにくればいいというのです。そこで彼女の家まで向かうことにした蘭たちだったのですが…

 老婆の家を訪れた蘭とコナンは老婆がアパートの大家で隣りには彼女の所有するアパートが建っていること、しかしたった一人の肉親である孫娘は後を継ぐ気がないため間もなくアパートを閉鎖することなどを彼女の口から聞きながら、小五郎がお気に入りだというお好み焼きをご馳走になることになります。ところがお好み焼きが焼き上がるのを待っている途中インターホンが鳴り……

 蘭たちに内緒でこっそりいい事をしていたらしい小五郎を、蘭は自ら出迎えて驚かせようとドアを勢いよく開けて笑顔を見えます。ところがドアを開けるとそこに立っていたのは、小五郎そっくりの格好はしているものの全く見ず知らずの男で……老婆の家を訪れていた小五郎というのは、真っ赤なニセモノだったのでした!

 小五郎を名乗る男の方も蘭を見て最初は誰なのか分からず戸惑っていましたが、蘭の後ろから姿を見せた老婆の言葉で小五郎の娘だと気づくと、慌ててドアの外へ蘭とコナンを連れ出し次のように事情を説明しはじめたのです。

 男は名前を恩田遼平といい、老婆の唯一の肉親である孫娘の彼氏で同じ大学の同級生だというのでした。その孫娘に頼まれて最初は空き巣が怖くて眠れない老婆のために鍵を2つつけたり防犯の心得を教えたりとアドバイスしていたらしいのですが、その後も妙な電話の勧誘を断ったり近所の飼い猫捜しを頼まれたりして現在に至るというのです。小五郎のフリをしているのは孫娘の思いつきらしく、その方が説得力が出るからというのですが…

 せっかく安心して暮らせるようになった老婆が小五郎がニセモノだと分かるとショックを受けるし、今回で最後にするからと懇願された蘭たちは仕方なく話を合わせることになったのです。

 テレビのチャンネルをパパパっと変えて番組を選ぶというザッピング…老婆がその日小五郎に相談を持ちかけたのは、昨晩テレビを見ていたらリモコンをいじってもいないのに急にそのような現象が起こり、ポスターガイストかお化けでも出たのではないかと思い思わず小五郎に電話したというのでした。

 この相談に対しコナンは既に何か気づいたことがあるようでしたが、小五郎のニセモノはというと答えに窮し戸惑っている様子…悪い人じゃなさそうだしちょっと可哀想だからと蘭から頼まれたコナンは仕方なく推理を披露して見事に老婆の悩みを解決に導いたのでした。大した事件でもないしまあ目をつぶってあげよう…蘭とコナンがそう思い始めたその時……

 突然老婆の家の隣に立つアパートの方から大きな悲鳴が聞こえてきたかと思うと、「おい死んでんじゃなねぇか!?」「そ、そんな何で!?」「きゅ、救急車…いや警察を…」という声が。それを聞いたコナンは急ぎ老婆の家を出て隣のアパートへと向かいますが、すると誰かがぶち破りでもしたのかアパートの部屋の一室の扉が壊され、そして中には…

 部屋の中に入ると壁にもたれるような形で倒れ、右手には包丁、首のあたりからは大量の血を流して息絶えている中年の男…そしてその無残な姿を取り囲むようにして立つ3人の男女が……

 部屋に到着したコナンはすぐにこのアパートの住人らしい3人の男女になぜ扉を壊したのかと問いただします。するとこの部屋の目覚し時計のベルがしばらく鳴りやまず、扉の前で何度も止めてくれと頼んだものの返事がなく、仕方なく3人で扉をぶち破ったというのです。何でも昨日も急にテレビを大音量でつけていて、しかもザッピングしていて迷惑だったのを3人で止めるように頼んでいたというのですが、ザッピングを聞いたコナンは…

 そして部屋の状況を見たコナンはすぐにこれが他殺であり、容疑者は遺体のそばに立っていた3人のアパートの住人の中にいると確信。ところがその時コナンの後を追って蘭たちと一緒に部屋へやってきた老婆が、事件はすぐに解決する…こちらには名探偵の毛利小五郎さんがついているからと言い出し……

今回の見どころ
殺人事件の解決を頼まれた小五郎のニセモノの運命やいかに!?

 最近小五郎の様子がどこかおかしい…夜中にばかり帰ってきて蘭の話もまったく聞く耳すら持たず、愛人でもできたのかとか、いや浮気調査で忙しいのではとか、蘭にこっそり遅くまで飲みに行っているのではとか、様々な憶測を呼ぶ中、蘭とコナンは街中で「小五郎はいい人だ、毎週のように自分の所を訪れて無償で事件を解決してくれている」と証言する老婆と知り合います。

 今晩も家に来るから自分で確かめてみればと言われた蘭はコナンを連れてその桐谷貴江という老婆の家に向かいますが、そこへ現れたのは真っ赤なニセモノ…ところがそのニセモノ、孫娘の大学の同級生で彼氏でもあるらしく、彼女から頼まれて小五郎に化けて空き巣対策を指南しているうちにいろいろと頼まれるようになり、本当の事を知ると老婆がショックを受けるであろうから何とか目をつぶっていて欲しいと蘭たちに懇願…実際に老婆から依頼された頼み事も大した事件でもないことからコナンも問題にしないことにしたのです。

 ところがその時老婆が大家をしている隣のアパートから大きな悲鳴が…コナンが急ぎ駆けつけると4号室の住人が血まみれになって倒れていて、コナンは現場の状況からすぐにそれが他殺だと見抜きます。

 しかしここで老婆がこちらには名探偵の毛利小五郎さんがついていると言い出したため、小五郎のニセモノは再び窮地に陥り……果たして小五郎のニセモノは無事にこの難局を乗り切れるのでしょうか、そしてホンモノの小五郎が最近帰りが遅いその理由とは…!?

原作との相違点
前編

 まず冒頭の夕方に園子とコナン、それに世良真純と一緒に学校から帰る途中、蘭が小五郎から蘭が電話を受けるシーンでコナンの推理の中でビアガーデンの場所が原作では「ビアガーデン米花」となっていますが、アニメでは米花デパートのビアガーデンということになっています。それ以外は細かいセリフの変更やシーンの追加などあるものの忠実に再現されて老婆が蘭に家に来てはどうかと誘う所まででオープニングに入ります。

 その後前半がスタートし、まず小五郎のニセモノが現れた後にホンモノの小五郎の様子が映し出されますが、ここが少し長めのコナンや蘭が見たら苦笑いするしかないシーンになっていますよね(苦笑)

 それからザッピングの話になった時にポルターガイストの所で老婆が「ポスターがイースト」と発言するシーンが追加されている、ザッピングの正体を解明する際にコナンがテレビをつけた時に原作ではビッグ大阪の比護選手がゴールを決める映像が登場しますが、ここにアニメでは「ビッグ大阪1-0東京スピリッツ」と対戦相手の表記が追加されている、などの細かい変更はありますが、全体的に原作に忠実な作りで原作第1話目の最後まで進んで前半は終了となります。

 後半に入るとまずTVの視聴予約について佐藤刑事が話すシーンで原作で佐藤刑事の背後にある番組表は文字がつぶれて全く読めませんが、アニメではここが割りといろいろと番組名が書かれています。ヤイバーとかゴメラの番組もありましたね。

 その後佐藤刑事たちがテレビのある部屋を訪れた際に佐藤刑事がリモコンでテレビのスイッチをつけると大きな音で原作ではYAIBAの映像が出てきますが、ここがアニメでは仮面ヤイバーに変更されていて、多分高木渉氏の声でヤイバーが演じられています(苦笑)

 その後もほぼ原作どおりの構成で原作2話目真ん中あたりのコナンの「まさか…これって…」というセリフの所までストーリーは進行し、やはり犯人は遺体を発見した3人の中にいる…誰が犯人かオレが必ず暴き出してやる…といった感じのオリジナルシーンで前編は締めくくられています。

後編

 まず前半については原作2話目の最終ページ手前まではほぼ原作どおりですが、最終ページから原作3話目に入ると構成全体には大きな変更はないものの突然セリフやシーンのカットが増えます。2話目最終ページ最後のコマのコナンのセリフもなぜかなくなっているのですが、これについては前半の一番最後に挿入され、コナンが変声機を使って推理を披露する直前までストーリーが進行していきます。

 後半はいよいよ解決編ですが、ここでも細かいセリフの変更やカットはあるもののほぼ原作に忠実な流れになっています。

 ただ特筆すべき点としてテレビ映像が9月8日水曜日夜9時が7月2日月曜日午後9時になっている、映像シーンにSLとゴメラの映像が追加されている、などの変更点がありました。

豆知識
ビアガーデン米花

 小五郎がバカ騒ぎしていたビアガーデン。アニメでは米花デパート内にあるビアガーデンという設定になっています。

 テレビを見る時にリモコンでチャンネルを頻繁に切り替えながら視聴することをこう呼ぶそうです。

 リモコンがなかった当時のテレビはチャンネルをテレビのそばに行って変えなければいけなかったのですが、リモコンが登場してからは簡単に変えられるようになったため、このような視聴の仕方が視聴者にも定着しました。

 そしてこの視聴方法になってからテレビ局側の視聴率にも影響が出るようになりましたし、つまらない番組は簡単にチャンネルを変えられてしまうため、視聴率競争がより激しくなったとも考えられます。

サングレイト米花南駅

 アニメのみ。被害者の部屋の布団の上に置かれたオーダーシステムマンションのチラシにこの名前が記載されていました。

「YAIBA!」と「夏のサンタクロース」

 どちらも青山先生のコナン以外の作品で、「YAIBA!」はコナン連載前に描かれていたシリーズ作品で仮面ヤイバーの名前の由来になっていることはご存知だと思います。

 一方「夏のサンタクロース」は青山先生がデビュー間もない頃に描かれた短編作品で、「青山剛昌短編集」の映像化の際に映像化されています。

 ちなみにコナンでは放映当初の作品である16「骨董品コレクター殺人事件」で一度名前が出てきて、その際に事件ファイル内であらすじ等詳しく説明しているので、一度ご覧ください。

 2作品とも作中にテレビが点いていた時にチラッと映像が出てくるのですが、残念ながらの「YAIBA!」方は原作のみでアニメでは「仮面ヤイバー」に差し替えられています。

探偵左文字

 新名任太朗が生み出し、現在は娘の新名香保里が書き継いでいるコナン(新一)も大ファンの人気ミステリーシリーズ。116-117「ミステリー作家失踪事件」で登場以来、数多くの作品でたまにチラッと名前が出てきます。

NEXTコナンズヒント
File661 洗濯バサミ
File662 名前
コント
File661
高木「毛利さんって、ニセモノでも事件を呼んじゃうんですね」
コナン「ハハ確かに…つかオレか?」

File662
元太「よおーし、カブト捕まえるぞ!」
コナン「頑張れよ」
高木「じゃあボクは犯人を」
コナン「頑張れよ」
OP
Miss Mystery」(BREAKERZ)
ED
オーバーライト」(BREAKERZ)
監督
於地紘仁
構成
大宙征基
絵コンテ
大宙征基
演出
File661 黒田晃一郎
File662 戸澤稔
作画監督
File661 山本道隆
File662 広中千恵美
デザインワークス 宍戸久美子
ビデオ
-
DVD
PART21-5
評価

■以下ネタバレつき感想■
(未見の方はご注意下さい)

感想
評価 ★★★

 今回の作品は小五郎のニセモノが登場するという内容で、これは以前243-244「毛利小五郎のニセ者」という作品でもありましたよね。この時は小五郎が越後光衛門と名乗って様子をうかがったりと結構笑えましたが、今回は小五郎は事件にはまったく関係してきませんでした。それと余談ですが結局小五郎が最近帰りが遅い理由って結局コナンが最初推理したとおりビアガーデンに通いつめているということでいいんですかね(苦笑)

 内容としてはニセモノが悪い人間じゃなそうということで老婆にバレないように彼のウソに蘭や佐藤刑事たちも付き合わされることになるのですが、これが後でややこしい事態を生み出します。結局コナンの活躍で何とか事は収まりましたが、ウソにウソを重ねることで事態がどんどん悪化していくのはいわば必然ですから、やはりウソをつくのは基本よくないということで締めたいと思います(苦笑)

 ミステリーとしてはトリックは今回は物理的な要素が強かったですが、ちょっと複雑過ぎて難しかった印象もあり、評価としては標準作かなということで星をつけています。そしてこのトリック、作品を見た後に本当にできるか実際に試した人もいるのではないかと思いました(苦笑) ここまで手の込んだトリックが見事に成功したとしたら、コナンクラスの探偵でなければほとんどごまかされて迷宮入りしてしまうかもしれませんね。

 ただ一点だけ気になったのが、今回悲鳴が聞こえる前に容疑者の3人は扉を破っているのですが、その音はコナンには聞こえなかったのでしょうかね。あまり事件とは結局直接関係ありませんでしたが、このシーンの際最初に違和感を感じたのはその点でした。なぜなら女性の悲鳴より、ドアをぶち破る音の方がおそらく大きい気がするからです。

 それから今回はテレビ番組がいろいろと画面に出てくるのでおなじみの作品や有名人がいろいろと登場していましたよね。「夏のサンタクロース」の懐かしい映像とかサッカーの比護選手、それに探偵左文字や沖野ヨーコのライブ映像もありました。ゴメラと仮面ヤイバーもありましたが、やはりヤイバーの映像の声がどうしても笑ってしまいます。どう聴いても高木渉氏でしたよね(苦笑)

 更にその高木氏ですが、ネクストコナンズヒントでも今回は大いに弾けています(笑)ので、気になった方は一度見直してみてください。

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