(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 目暮警部 阿笠博士 灰原哀 妃英理 白鳥警部 佐藤刑事 高木刑事 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 鈴木園子 服部平次 遠山和葉 ヤマネ |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 警視庁捜査一課警部 新一の家の近所に住む自称天才科学者 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 蘭の母親、腕利きの弁護士 警視庁捜査一課警部 警部補、目暮の部下 巡査部長、目暮の部下 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 西の高校生探偵、新一のライヴァル 平次の幼なじみ ネズミのような小さな動物 |
高山みなみ 山口勝平 山崎和佳奈 神谷明 茶風林 緒方賢一 林原めぐみ 高島雅羅 井上和彦 湯屋敦子 高木渉 岩居由希子 高木渉 大谷育江 松井菜桜子 堀川りょう 宮村優子 ??? |
キャビアにフォアグラ、生牡蠣…小五郎でなくてもヨダレが止まりそうもない豪華な食事の数々が用意されたのは、警視庁捜査一課の白鳥警部の別荘で行なわれたパーティーでのこと。その日は白鳥警部の軽井沢にある別荘の新築を祝うために、顔なじみのメンバーたちを集めて盛大なパーティーが開かれていたのでした。
出席したのは主宰者である白鳥警部をはじめ、目暮警部に佐藤、高木の両刑事という警察関係者、それに小五郎と妃の夫婦に加え蘭と園子の仲良しコンビ、阿笠博士に灰原哀、そして歩美、元太、光彦の少年探偵団の三人。それからたまたま東京に来ていたという服部平次と遠山和葉の大阪コンビと、最後にわれらがコナンの計16名。
妃にたしなめられながらもめげずにひたすら豪華な食事とタダ酒を思う存分堪能する小五郎と、灰原哀に釘を差されカロリーの低い食べ物をわびしく食べる阿笠博士…。
オードブルを前にとても一人では全部食べ切れないと余計な心配をする元太に、それは一人分の食事じゃないともっともなツッコミを入れる光彦と歩美…。
フランス料理が苦手だという佐藤刑事に気を使ってお通しまで用意している気の細かい白鳥警部とそれを見て横でただただ苦笑する高木刑事。そして小五郎にシャンパンを勧めるベレー帽姿の目暮…。
そして外のテラスに出て秋晴れの軽井沢の自然を満喫するコナンと蘭と園子、それに平次と和葉の大阪の漫才コンビ…。
それぞれが今回のパーティーを思いのままに楽しんでいましたが、やがて一同はその日の目玉とされていた、白鳥警部秘蔵のお宝ワインを観賞するため、パーティー会場のリビングから地下にあるワインセラーへと移動することになります。
ところが今回、そのワインをめぐり重大な事件が発生することになろうとは…まだこの時点では誰も想像していなかったのでした…。
ワインセラーに案内された一同は、その部屋の広さにただ驚くばかりでした。そしてただ広いばかりではなく、中には本物の樫の木を切って造らせたという特製のワイン棚まであり、その本格的な作りにはもはやただの趣味とはいえない凄まじさが滲み出ていたのです。
それから白鳥警部は、大切なワインが納められているというその特製のワイン棚に向かい、自慢のコレクションの数々を披露し始めます。
シャトーマルゴーの1979年もの、シャトーラフィットの1985年もの、ル・パンの1992年ものと、どれも目玉が飛び出そうな高級品ばかり…そして最後にお目見えしたのが、今日の主役だというシャトーラトゥールの1961年もののワインで、一口飲めば安物との違いなどすぐに分かるという逸品中の逸品だったのです。
あまりの高級ワインの連発にため息混じりでリビングに引き返す一同でしたが、それから白鳥警部はメインディッシュの準備のためにパーティーの会場からいったん退席することとなり、出席者たちは1時間ほど思い思いの時間を過ごすことになります。
佐藤刑事は白鳥家のあまりの財力を見せつけられため息まじりの高木刑事を放置して小五郎と以前の事件のことで何やら話し出し…探偵団の三人は他にどのような部屋があるのか興味を持ったらしく探険ごっこに繰り出し…
その一方でコナンはというと、平次と和葉それに蘭と一緒に、再び外に出て秋の軽井沢の自然を楽しむことになります。
一緒にテニスをしたり、自転車と飛ばしたり……2、3年前に新一の両親に連れてきてもらったことがある蘭にとっては、今歩いている軽井沢旧礼拝堂や雲場池などはまさに思い出の場所であり、景色を眺めながらも蘭はその時のことを懐かしそうに思い出していました。そしてそんな蘭の姿を見たコナンもまた、同じようにして新一時代の当時を懐かしく振り返っていたのです…。
そうこうしているうちに時間はあっという間に過ぎ、ようやく白鳥警部がメインディッシュを完成させて再びリビングに姿を現わします。”羊の肩肉のロースト~任三郎風”と名前のつけられたその料理は、誰が見ても垂涎ものの逸品…。どうやら白鳥は料理も趣味の一つらしく、お婿さんとしては最適と妃からも太鼓判を押されます。
それを聞いてますます自信を失くす高木刑事でしたが、白鳥はそんな高木刑事を尻目に主役のワインを取りに行って来ると言い残して地下のワインセラーに向かったのでした。
そしてついに事件は発生したのです。何と白鳥の一番の自慢であり、本日の主役を務めるはずだったあのシャトーラトゥールが、地下のワインセラーの床の上で粉々に割れてしまっていたのです…!
今手に入れようとすると数十万円はするという最高級の赤ワイン…。探険ごっこをしていた探偵団たちの仕業? 酔っ払って何も覚えていない小五郎が前後不覚に陥った末に…? それとも高木刑事が白鳥警部を妬んでワインを…? あるいはひょっとすると白鳥警部自身が過って落としたとも…
外部犯の線もないとは言えないものの、常識的に考えればパーティーの出席者16名の中に犯人はいると考えるのが自然な流れだったのですが、一体誰が何のためにこんなことを…!?
全員サービスビデオの第2弾となった今回の作品は、何と犯人がコナンのレギュラーキャラクターの中にいるという、珍しい展開になっています。それだけに容疑者はコナンも含めて全員…刑事も探偵も今回は一切関係なし…一体誰が白鳥警部の最高級赤ワインを落として割ってしまったのでしょうか?
そして今回はそれ以外にも蘭が新一の両親に連れられて2、3年前に軽井沢を訪れた時のエピソードも披露されていて、新一と蘭のファンにとってもかなり嬉しいお話になっていると思います。その辺りも要注目のお話ですね。
園子お嬢様の持っている別荘のある場所。皆観光地として有名ですよね。それにしても園子お嬢様が軽井沢に初めて来たというのは意外でした。
ちなみに作中では園子は「軽井沢には別荘を持っていない」ということをはっきり言っているのですが、331-332「疑惑の辛口カレー」では園子は軽井沢に別荘があると言っています。
まあ今回の作品はビデオオリジナルですから、辛口カレー事件の話の前に別荘を買ったということにしておきましょう(苦笑)
元太の両親が経営する酒屋の名前。今回元太は白鳥警部の別荘にある地下のワインセラーを見て、自分の家よりも一杯あると驚いていました。
このセリフからも、白鳥警部のワインコレクションがいかに厖大なものだったのかが分かりますね。
全部高級ワインの銘柄。ちなみにシャトーとはフランス語で塔のこと。
世界最高峰の赤ワインといえばフランスのボルドー地方が有名ですが、この地方の第一級のシャトーは”5大シャトー”と称され最高級の格付けが与えられているそうです。
1855年のパリ万博での格付けでラトゥール、マルゴー、オー・ブリオン、ラフィットが第一級に選ばれ、1973年にムートンも新たに格付けされて5つになりました。一本数万円もするので、とても一般庶民には口にできるものではありませんが、そんなワインが白鳥警部のワインセラーに3本もあるとは(苦笑)
この5つ以外にもボルドー地方のワインには高級なものは多数あり、最も高い値段で取引されるというシャトーペトリュスやそれとほぼ同額で取引されるというシャトー・ル・パン、あるいはジョディ先生の名前の由来にもなっているサンテミリオンなどもあります。
なおこれら5大シャトーについて詳しく知りたい方は年号ワインドットコムというサイトのこちらのページおよびフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
それから前日に妹夫婦と1985年ものを飲んでしまったというサッシカイヤ(サッシカイア)というワインは、トスカーナ地方で作られるイタリア最高峰と言われるワインです。
赤ワインの底に溜まる沈殿物のこと。ワインの色素やタンニンが沈殿したもので、古いワインには付き物とされています。
ちなみに沈殿のさせ方を失敗すると、ワインを半分近く捨てなくてはいけなくなる場合もあるのだとか。
コナンと蘭、それに平次と和葉が秋の軽井沢に散歩に出かけた際に通った場所。礼拝堂ではちょうど結婚式も行なわれていて、それを見た蘭と和葉は思わずっとりと見とれていました。
ちなみに旧軽井沢礼拝堂は別名ショー記念礼拝堂ともいい、軽井沢開発に尽力したA・C・ショー牧師の功績を讃えて建てられたものなのだそうです。
なお旧軽井沢礼拝堂についてはフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
同じく蘭たちが散歩に出かけた際に通った場所。蘭は以前2、3年ほど前に新一の両親に軽井沢に連れてきてもらったことがあるらしく、この辺りには詳しいため案内役を買って出ました。
軽井沢観光の名所のひとつでもあるこの雲場池、蘭にとっては以前貸別荘から新一と自転車で来た思い出の場所なのだとか。
なお雲場池についてはフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
今回の作品はシリーズキャラクター全員が容疑者という珍しい設定で、それだけでもドキドキしてしまう作品です。
そして白鳥警部自慢の赤ワインを割ったのは誰かというのが最大の焦点な訳ですが、その裏には探険ごっこをしてワインセラーに入っていった探偵団とその落としていったブドウを食べてしまったヤマネ、イタズラでワインをすり替えた園子、酔っ払ってワインの位置を変えてしまった小五郎といろいろと複雑な事情が絡み合い、それを一つ一つ解きほぐして推理を組み立てていくのが楽しいですね。
更に結末にはどんでん返しも用意されていて、また事件の解決法にも一工夫凝らされています。ただ事件を犯人を名指しして解決するだけではなく、その代わりに妃の差し金で事件を利用して小五郎に酒を控えさせようとしている点まで本当によく考えられたストーリーだったと思います。それに平次の真っ正直な性格もよく描写されていて、平次ファンはますます彼のことが好きになるのではないでしょうか。
謎解きとしては冒頭にヤマネはちらっと窓の外の木の所に姿を見せていますし、ワインが割られてからも、真犯人の靴下が折られているのは確認できますし、伏線も一応張られています。ただ靴下は本当に一瞬なので肉眼で確認するのはほぼ不可能ではありますが(苦笑)
それから何と言っても新一と蘭の二人が2、3年前の軽井沢で過ごした日々を再び軽井沢を訪れたことで思い出し、懐かしそうに回想するシーンが秀逸ですね。このシーンだけでもファンにはたまらない所ですが、それが最後にコナンが犯人を見過ごしてやる理由にもなっていて、事件にちゃんとリンクしている点はまさにお見事としか言いようがありませんでした。
全員サービスということで軽い気持ちで見た作品でしたが、予想以上に素晴らしく見事な脚本の出来栄えだったと思います。ファンなら見た方がいい作品ではなく、絶対見ておくべき作品でしょう。
それからエンディングテーマ中のキャラクターたちのカラオケのシーンもファンにとっては嬉しいですね。キャラクターが活き活きと描かれていて、歌にいたるまですべてにおいて楽しい時間を過ごせること請け合いのオススメの作品です。