(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 毛利蘭 黒羽快斗 中森青子 中森銀三 セリザベス フィリップ シーザー(2) ヘンリー殿下 新名次官 ローズ 謎の男 車掌 バーテン 怪盗キッド ジャッカル |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 江古田高校2年B組、怪盗キッドの正体 快斗の同級生、快斗の幼なじみ 東京警視庁 捜査二課警部 イングラム公国女王 イングラム公国王子、セリザベスの子 セリザベスの飼いネコ イングラム公国前国王、2年前に病死 外務省の役人 謎のスナイパー ローズの相棒 ロイヤル・エクスプレス号の車掌 ロイヤル・エクスプレス号のバーテン 神出鬼没の大怪盗、通称怪盗1412号 謎の男の正体、国際指名手配の宝石強盗犯 |
高山みなみ 山崎和佳奈 山口勝平 高山みなみ 石塚運昇 篠原恵美 鉄砲塚葉子 ??? 声の出演なし 中田和宏 鈴木麻里子 石井康嗣 久保さゆり 岡崎雅紘 山口勝平 石井康嗣 |
日本国が誇る豪華列車〈ロイヤル・エクスプレス〉には、その晩一人の高貴な人物が乗り込んでいました。その人物とはイングラム公国の女王セリザベスで、彼女は日本の国民と少しでも触れ合うことができるようにと敢えて貸切にしようという日本国外務省の申し出を断り、一般客とともに列車の旅を楽しむことになったのです。
ところがこの女王陛下の列車の旅に同道し、彼女の警護をしている人物の中にあの警視庁捜査二課の中森銀三警部の姿があり…案の定この列車の中には怪盗キッドも乗り込んでいて、女王セリザベスの持つ宝石を狙っていることが判明したのでした。
しかもキッドは大胆にもセリザベスの個室にまでやってきたらしいのですが、一方でセリザベスはその出来事を何事もなかったかのように平然と世話係の新名外務次官に話したのです。
怪盗キッドが今回狙っているのは、イングラム公国の宝で女王セリザベスの胸に燦然と輝く、ヨーロッパ最大のトパーズ〈クリスタル・マザー〉。
キッドはその宝石を奪うため、いつものように予告状を大使館に送りつけて犯行に及んだのですが、セリザベスの個室を襲いながらも何故か宝石は盗らなかったというのです。
その理由は実に簡単なことで、なぜならセリザベスが普段身に付けている宝石は精巧に作られたニセ物だったからでした。そして本物は別の場所に隠してあり、たとえ警察といえどもその在り処を教えることはできないというのです…。そして中森警部の警察を挙げての列車内の徹底的な捜査という方針にも許可を与えることはなく…
なぜならこれはキッドとセリザベスとの勝負…列車が大阪に着くまであと2時間半、それまでにキッドが予告状どおりに宝石を盗み出すか、あるいはセリザベスがそれを守り切るのか…国の名誉を賭けた一騎打ちなのだからと、セリザベスは誇り高く宣言するのでした。
一方肝心のキッドはというと、今は快斗の姿で巧妙に仕掛けた盗聴器を使いちゃっかり女王と中森警部のやり取りを盗み聞きしていたのでした。ほどなく盗聴器は中森警部に発見されて破壊されてしまいますが、幼馴染みで中森警部の娘でもある青子が父親に頼んで列車の切符を用意してくれたため、労せずして列車の中に入ることができていたのです。
そしてもう一人忘れてはならない人物がこの列車の中に乗り込んでいました。大阪に招待してくれた和葉たちの計らいで、コナンと蘭がセリザベスと同じ〈ロイヤル・エクスプレス〉号に乗って大阪へと向かっていたのです。
憧れの女王陛下と同じ列車に乗れたことで蘭は大感激でしたが、コナンはというと列車に乗り込む際に女王の警護の中にあの中森警部の姿があったことに気づいたらしく、もしかしたらキッドから犯行の予告状が出ているのでは…とそんなことばかりを気にしていたのです。
それからコナンと蘭はセリザベスに会えるかもしれないと考え、彼女がいるはずのサロン席へと向かったのですが、予約がなかったために結局入室はできず、キッドに会えるかもしれないと期待していたコナンも残念そうに引き返します。大阪に着けばセリザベスをまた見ることができるであろうことは確かだったのですが、それまで待っていられないコナンは、セリザベスに会う方法をあれこれと考え始めたのでした。
更に…〈ロイヤル・エクスプレス〉号には、見過ごすことのできない謎の二人組が潜伏していたのです。
どうやら彼らはキッドと同様に〈クリスタル・マザー〉を狙っているらしく、キッドの予告状で警護の数が増えたことを苦々しく思ってはいるものの、必要ならばキッドから宝石を奪えばよいと考えていたのです。そして必要とあればキッドを殺しても構わないとまで考えているらしく…
更にその二人組のうち女性雑誌を読んでいた女の方は名前をローズといい、どうやら腕利きのスナイパーらしく、殺し屋として名を上げるために女王セリザベスの命を狙っているようなのです…。
女王セリザベスの宝石を狙う怪盗キッドと、それを懸命に守ろうとする中森警部以下の警察陣。さらにキッドの存在を気にするたまたま列車に乗り合わせたコナンと、宝石と女王の命をつけ狙う謎のスナイパー二人組…
様々な人物の思惑が絡み合う中、やがてキッドは青子に連れられて難なくセリザベスの滞在するサロン席へと侵入することに成功。あとは本物の〈クリスタル・マザー〉がどこに隠されているかを探し当てるだけだったのですが……
女王セリザベスの乗る豪華列車〈ロイヤル・エクスプレス〉号に侵入し、女王の身につける宝石〈クリスタル・マザー〉を手中に収めんとする怪盗キッド。
いつものように予告状を送りつけたため、列車内にはキッド逮捕に執念を燃やす中森警部の姿もあり、それに加えてたまたま大阪に向かうため列車に乗り込んでいたコナンと蘭の姿もありました。更に列車内には宝石をつけ狙う殺し屋風の二人組の姿もあり、事態は様々な人間を巻き込んで展開されていきます。
〈クリスタル・マザー〉はどこに隠されているのか、そしてキッドは見事にそれを奪うことが出来るのか? 更に列車に居合わせたコナンは事件にどう絡んでいくのか…いろいろと興味の尽きない全員サービスビデオ第4弾です。
今回の作品は青山作品の一つであり、コナンにも登場する怪盗キッドが主人公の「まじっく快斗」の一作品として描かれた「クリスタル・マザーの巻」がベースとなっています。従って原作ではコナンやコナンの登場人物たちは登場せず、今回のOVA作品で用意されたシーンはすべてこの全員サービスのビデオのためのオリジナルということになります。
細かく検討してみると、まず冒頭キッドがセリザベス女王の個室を襲うシーンがあるのですが、これは原作にはないシーンです。
それから快斗と青子が列車の中で話すシーンの後にようやくコナンと蘭が登場。和葉たちの計らいで大阪に招待される際に列車に乗り合わせることができたという設定で無理なく登場を果たしています。
そしてそれ以外にも原作ではキッドの宿敵となっている謎の組織に関係する男が登場するのですが、今回のアニメではその男に加えてローズという名前の女のスナイパーを新たに登場させています。
それから今回はコナンを登場させていることもあり、宝石の隠し場所をコナンが推理することになります。
そしてそこではG・K・チェスタトンのブラウン神父のとある作品が引き合いに出されて推理が展開されていくのですが、これはネタバレになってしまうのでご自分の目で確かめて頂きたいと思います。
さらに結末は大筋ではまったく変わっていないのですが、コナンが登場したことにより若干追加されている事項があります。このあたりはネタバレ感想で書きたいと思います。
今回のターゲットとなった女王セリザベスの持つ宝石〈クリスタル・マザー〉はトパーズで、しかもヨーロッパ最大の大きさとされていました。
トパーズについて詳しくはフリー百科事典ウィキペディアのこちらのページを参照下さい。
青子が列車の中で読んでいた雑誌
シャーロック・ホームズとともにホームズ期の探偵として非常に有名なのが今回ちらっと登場したブラウン神父です。
ブラウン神父譚はトリックの独創性でもとても優れた作品が多いのですが、刑事コロンボなどのように「見た目はどう見ても冴えないが、実は名探偵」という名探偵像を生み出したことでも有名なシリーズです。このあたりはコナンの単行本第13巻の名探偵図鑑でも紹介されているのでご存知の方も多いかと思います。
G・K・チェスタトンとブラウン神父については当サイトの別館に作家・探偵ファイルがありますので、詳しくはそちらを参照下さい。
作中に登場するトンネル。どう登場するかは最後まで見てのお楽しみです。
今回の作品は元々はまじっく快斗として発表されたもので、コナンは登場しないのですが、今回の全員サービスビデオ化にあたって、コナンの登場シーンも追加されて、さらに味わい深い作品に仕上がっています。
基本的には上記のような事情があって主役はほとんど怪盗キッドといって間違いないのですが、今回は宝石の隠し場所を探すという本格ミステリとしての要素も加わっているので、非常に見ごたえがありますね。そしてその隠し場所というのも人間の心理の盲点をついたかなり素晴らしい出来栄えだったと思います。
正直これだけでもう言うことはなくかなり高い評価なのですが、それに加えて宝石と怪盗キッドを付けねらう怪しげな組織の存在やなぜか厳しく息子に接する女王セリザベスの心に秘めた感情の正体など、ラストには見どころが満載でしかも感動的なクライマックスでした。フィリップ王子のためにキッドが力になってあげるのも彼の人柄が出ていてとても心温まる展開だったと思います。
以上は原作を読んだ際の感想に近いのですが、今回はこれにコナンと蘭、それに怪しげな女スナイパーというキャラを追加してかなりオリジナル色が濃くなっていて、正直どうなのかなと心配したのですが、幸い原作にはほとんど手を触れず、原作の良さをまったく壊さないで付加的なストーリーとしてコナンたちを登場させているので、不快感もありませんでした。
基本的にコナンは女スナイパーとだけ対決していて、キッドとも直接顔を合わせていませんし、危なくなると上手く蘭がコナンを引っ張って退場させてくれるので(笑)、そうやって原作の話からはほとんど隔離されていた気がします。
またブラウン神父を登場させたコナンの推理シーンは謎解きをするのに効果的に働いたと思いますし、今回は上手く脇役を務めたかなという印象です。
それから最後にジャッカルという強盗犯が例の根岸田トンネルで凄いことになる訳ですが(苦笑)、このあたりはいかにもマンガっぽくていいですね。
現実にはあれだけのスピードでぶつかったら絶対命はありませんが(苦笑)、推理とは関係ないシーンであればこういうリアリティー云々を超えたマンガらしいシーンもありなのかなと個人的には思っています。というよりこういうオチの方が見ていて楽しくありませんか(笑)