(青山剛昌原作・小学館・週刊少年サンデー)
江戸川コナン 工藤新一 毛利蘭 毛利小五郎 阿笠博士 灰原哀 目暮警部 高木刑事 吉田歩美 小嶋元太 円谷光彦 鈴木園子 大下武男(54) 南沢淳平(26) 東田直也(32) 西崎栄子(30) 北野強(28) 中道 会沢 クロヌリビーエル(6) サワイチバン(5) アタックワールド(6) イキデラックス(7) スペシャル タック(7) コンドウシャウト(6) メンタルグッド(9) モモストーン(5) アスノイデス(7) |
本編の主人公、正体は工藤新一 本編の主人公、高校生探偵 本編のヒロイン、新一の幼なじみ 蘭の父親で私立探偵 新一の家の近所に住む自称天才科学者 黒の組織から来た謎の少女、本名宮野志保 警視庁捜査一課警部 巡査部長、目暮の部下 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 帝丹小学校に通うコナンのクラスメート 鈴木財閥の令嬢、蘭の同級生で親友 「週刊NEWS」社長兼編集長 「週刊NEWS」社員、第一発見者 「週刊NEWS」社員 「週刊NEWS」社員 「週刊NEWS」社員 帝丹高校2年B組生徒、蘭たちの同級生 帝丹高校2年B組生徒、蘭たちの同級生 島騎手騎乗の牝馬、蛯名厩舎所属 神本騎手騎乗の牝馬、佐藤厩舎所属 山田騎手騎乗の牝馬、山浦厩舎所属 原崎騎手騎乗の牝馬、川島厩舎所属 拝崎騎手騎乗の牝馬、佐々厩舎所属 坂多騎手騎乗の牝馬、松浦厩舎所属 本駿騎手騎乗の牝馬、宮下厩舎所属 石崎騎手騎乗の牝馬、岡厩舎所属 和島騎手騎乗の牝馬、鷹見厩舎所属 |
高山みなみ 山口勝平 山崎和佳奈 神谷明 声の出演なし 林原めぐみ 茶風林 高木渉 岩居由希子 高木渉 大谷育江 松井菜桜子 木村雅史 奈良徹 浪川大輔 新井里美 鳥海勝美 福島潤 菅沼久義 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし 声の出演なし |
とある日の午前11時頃、都内にある雑誌社「週刊NEWS」のオフィス内では、目暮警部による殺人事件の捜査が行われていました。殺害されたのはの社長兼編集長の大下武男で、死亡推定時刻はちょうど24時間ほど前の昨日午前11時前後、ナイフで背中を一突きでした。
床の上の血痕やテーブルの上の状況、テレビ画面の向きなどから見て、被害者は室内にあるソファでピザを食べながらテレビを見ていた所を後ろから刺されたらしく…昨日は休日で雑誌社も休みだったことから、一人で休日出勤していた被害者をそれと知って何者かが襲ったと考えられ、同社の社員である4人の人物が真っ先に疑われたのです。
そして第一発見者の南沢淳平によると、朝10時に出社した際に遺体を発見したらしいのですが、その時入口のドアには鍵がかかっていて、テレビの画面は消えていたらしく…大下の鍵はデスクの上に残っていて、他に合鍵を持っているのはその4人の社員だけ。しかもそれぞれが被害者殺害の動機を持っていたのでした。
まず東田直也は雑誌の編集方針を巡って日頃から被害者と対立し、犯行前夜にも激しく言い争うのを他の3人が聞いていました。しかし「殴る価値もない男だから」と犯行を否定します。
次に西崎栄子は元々会社自体が彼女の父親が創設したもので、大下に乗っ取られ父親が失意のまま病死したことから被害者はいわば父親の仇。しかし自分なら毒でも飲ませ、もっと苦しめて死なせてやると犯行を否定します。
ギャンブル好きだという北野強は被害者に多額の借金があり返済を迫られていたが、しかし自分はいつかこうなるのではと予想していて、その読みが当たったと犯行を否定します。
そして南沢淳平は命がけの取材で某政治家の汚職ネタを掴んだのに被害者が裏取引をしたためボツにされた事を恨んでいたらしく…。
4人が殺害動機を認めつつも犯行を否定する中、警部は現場に同行していた小五郎に意見を求めます。すると小五郎は右手の人差指が被害者の残したダイイングメッセージになっていると得意満面に推理を披露…高木刑事に指先からフローリングの継ぎ目をあみだくじの要領でたどるように指示を出し、事件はこれで解決するかに思われたのでしたが……
しかし容疑者たちはおろか目暮警部からも反論を浴び、窮地に陥る小五郎…ところがそこへ突然部屋の明かりが落ち、室内にはアメイジング・グレイスの曲が流れ、フルートを手にマントをなびかせながら勇ましく現れたのは何と……
女子高生探偵・鈴木園子よ…華々しい効果音と同時にスポットライトが当たる。ヒロイン園子の登場である!─本当は「推理クイーン園子」にしようとしたというその文章は作文ではなく劇の台本……何と今までの話は帝丹高校2年の有志で教会のチャリティー劇をやることになり、その脚本として園子が書いたものだったのです。しかも主役と演出も園子の手によるものになるらしいのですが、本当に大丈夫なのでしょうか!?
この物語のミソはリアリティーを持たせるために本物の刑事と探偵を登場させている所だと力説する園子、しかし蘭は眠りの小五郎になる前は確かにこんな感じではあるものの小五郎のキャラに少し不満そう。もっとも脚本であり園子が主役である以上、今回は仕方ないと蘭に謝る園子。そしてそれを少年探偵団たちと公園のベンチのそばで聞いていたコナンも自分が登場しないのだからそれは当然だと一人で納得していたのでした。しかしそもそも教会のチャリティー劇に殺人事件なんて……
ところが…ここまでは素晴らしい出来栄えの園子の台本でしたが、続きはまだないというのでした。この先がどうしても思いつかなくてというのですが、被害者の大下の指が本当に示していたものも、犯人も園子にはサッパリ…一応東田にしようと思っているらしいのですが、自分がカッコよく登場することばかり考えて、他のことは全然考えていなかったというのです……。
公演まではあと1週間、セリフの稽古や衣装、舞台装置、音楽など諸々の事を考えると今日中に台本が仕上がらないとまずいらしいのですが、こうなれば本物の探偵である小五郎の知恵を拝借しようと考えてはいるものの、作中自分の引き立て役として迷探偵ぶりを発揮させてしまっているだけにいきなり台本を見せるのも怖く、それで蘭を呼び出して相談を持ちかけたという訳だったのです。
ダイイングメッセージの本当の意味は……園子の説明が終わると蘭だけでなくその場に居合わせたコナンや灰原ら少年探偵団たちも知恵を絞り、園子の台本を完成させる手伝いをする羽目になってしまったのですが、まずは灰原が設定上無理があると、なぜ小五郎がいきなり事件現場にいるのかといきなりの先制パンチ…そして物的証拠がない点まで、台本の問題点を細部に渡って指摘された園子は…
そしてそれを見かねた蘭は、台本の一部を伏せた上で小五郎に相談してみるからと携帯電話で連絡を取ろうとしますが、肝心の小五郎はというと……蘭は「お父さん、まだ眠ってないから…」と必死にフォローしますが、果たしてこんな調子で本当に台本は無事に完成するのでしょうか!?
帝丹高校2年の有志で教会のチャリティー劇をやることになり、台本と主演と演出を担当することになってしまった園子。主人公である女子高生探偵・鈴木園子が華々しく登場するシーンまでは何とか書けた脚本も、続きはサッパリ……諸々の準備もありその日中に台本を仕上げる必要に迫られた園子は、泣く泣く蘭に頼んで小五郎に知恵を借りようとします。
都内にある雑誌社「週刊NEWS」のオフィス内で社長兼編集長の大下武男が室内にあるソファでピザを食べながらテレビを見ていた所をナイフで背中を刺されて殺害された事件。容疑者は会社の社員で鍵を持っていたという4人で、それぞれ動機が被害者に恨みを持ち十分な犯行動機を持ち合わせていました。
容疑者の名前は南沢淳平に東田直也に西崎栄子、そして北野強…果たして犯人にされるのは一体、そして犯行を証明する物証は? 園子の脚本は誰の手によりどのような形で完成するのでしょうか!?
すっかりお馴染みの「部屋を明るくしてテレビから離れて見て下さい」というお願いですが、今回は鈴木園子からのお願いという形になっていました。ただし文章だけで、園子にセリフはありません。
今回の事件が起きた場所。被害者はこの会社の社長兼編集長の大下武男ですが、元々は社員の一人西崎栄子の父親が創立した会社で、それを乗っ取ったそうです。
週刊NEWSの社内にはこの銘柄のビールの箱が2つ端の方に置かれていました。どう見てもサッポロ黒ラベルですね。
その後小五郎の飲んでいた缶ビールから、1976年の発売でふらの限定、麦芽100%の生ビールだということが分かります。
作曲者不詳、ジョン・ニュートン作詞による賛美歌。「アメイジング」とはすばらしいという意味で、「グレイス」は神の恵みや恩寵という意味だそうです。
今回の全員サービスDVDがリリースされたのと同じ年に公開されたコナンの映画第12弾「戦慄の楽譜」でこの曲はストーリー上も重大な意味を持ちました。
今回園子たちが話をしていた公演は場所ははっきり書いてありませんでしたが、コナンがトイレに行った際に「米花町」という表記があったので、確証はありませんが素直に考えれば米花公園なのかなと思います。
今回のオリジナルアニメストーリー(OVA)第8弾は、何と未完成の推理劇の脚本の続きを考えるという、何ともユニークなミステリーでしたね。こういった趣向は現実の話としてイギリスの文豪チャールズ・ディケンズが未完成のまま他界した世紀の問題長編「エドウィン・ドルードの謎」の続きをいろいろな作家が挑戦したということもあるぐらいですから今までにない話ではないのですが、コナンでもこういうユニークな趣向のミステリーが見られるというのはとても嬉しいですね。そしてそのストーリーの質も抜群に良くて、今回は歴史に残る傑作だったのではないかと個人的には思うぐらいの出来栄えでした。
まず小五郎に相談されるも、園子と同じ推理(笑)、次に新一に相談されるも慌ててコナンはトイレに駆け込み後で電話すると言ってその場を凌ぎます。それから元太の推理に始まり、歩美、光彦と推理を展開していきますが、元太は期待どおり「うな重のたれも甘過ぎちゃいけねー」と実質うな重が言いたかっただけで(笑)、歩美のは可愛らしいとしても光彦のはSFになっていますし(苦笑)、どれもこれも迷推理な上に園子ではなく勝手に自分を主人公にしていますし、想像の世界だと思ってハチャメチャな展開にしてましたよね。それにいちいち反応していた目暮警部と高木刑事と容疑者の皆さん、本当にお疲れ様でした。
そしてコナンもさすがに現実の事件とは勝手が違うからと言いますが、そこはさすがに主人公で見事に知恵を絞って台本を仕上げて見せます。そしてこれが何とも目からウロコの素晴らしいダイイングメッセージになっています。太陽の光で床に映った窓の影と東西南北を掛け合わせるとは凄いですし、園子の要望どおり東田を犯人にしているあたりも上手いですね。まあ元々こういう結論ありきで逆の手順で作っているのでしょうけど、その構成がとても良いので、何だか今までに見たことのない展開で実に新鮮なストーリーとして楽しめました。
最後に新一と蘭のエピソードもちゃっかり挿入していてファンにはたまりませんし、本格・ユーモア・ロマンス、それに園子がカゼで急遽蘭が登板で空手アクションの要素も追加と様々な要素が上手く詰め込まれていて最高のひと時を過ごせた30分でした。新境地を開いた傑作ではないでしょうか。星が5点満点でも10個つけたいぐらいの作品です。